先輩のお店でピザを食べる

7時起き。
ご飯鮭納豆味噌汁大根おろし。完璧な布陣の朝飯。

8時40分から仕事。
最近多いのは、Aという入れ物に入れる情報がBに入ってしまい、それを移動するとか削除するという仕事。
以前も、新しい商品の導入時には、同じような混乱が起きた。

昼、弁当。プラス、コールスローサラダとハンバーグ。

『三国志』12巻読み終える。
街亭の戦いで諸葛亮の言いつけを守らずに山上に布陣する馬謖。
孔明の大作戦も、馬謖のせいでおじゃん。
馬謖の才を愛していた孔明は、それでも命令違反を罪とし、泣いて馬謖を切る。

このエピソードは、脚色されすぎているような気がしてならなかった。
北方版は、街亭の守りを命じられた馬謖の心理を、スポーツや格闘技における大舞台のプレッシャーのごとく表現していて納得できた。

してはいけないと言われてことを、ついやってしまう人間。
それによって受ける報い。
神話の構造だと思う。

旧約聖書で、ソドムとゴモラが神によって滅ぼされる時、決して振り向いてはいけないと言われていたのに、ロトの妻は振り向いてしまい、塩になってしまった。
黄泉国まで亡き妻のイザナミに会いにやってきたイザナギは、決して見てはいけないと言われていたのに、蛆がたかる変わり果てた妻の姿を見てしまい、怒り狂った妻に追いかけられる。

決してのぞいてはいけません。のぞいたら鶴。

押すなよ、絶対押すなよ。

オレがやるよ。だったらオレがやるよ。
じゃあオレがやるよ! どうぞどうぞ。

午後、移動、削除、それなりに落ち着く。
メンテナンスも無事終了。
定時にあがる。

御徒町へ。
アメ横、ジュエンスポーツにて、シューズを物色。
アディダスのシューズを購入。
「会員カード忘れちゃったんだけど」
「すいません、カードが割引券代わりになってるんで」
一年に一回くらいしか行かないのに、カードを持ち歩くわけないだろうに。

二木の菓子へ。
今年のオレは、ピーナッツやアーモンドなど、ナッツの消費量が例年になく増大し、ナッツバカになっている。
だったら、大きい袋のものを買った方が安く済む。

ピーナッツ1キロ、アーモンド300グラム購入。

久しぶりのアメ横は楽しかった。

新御徒町まで歩き、佐竹商店街へ。
黒田さんのお店の前で写真を撮っていたら、中にいた黒田さんが手を振ってきた。
あれ? バレている。なぜだろう。

中に入る。
「浅香から、来るって連絡きていたからさ。そろそろかなあと思っていたよ」
どうやら、写真を撮っている段階で、バレバレだったようだ。

浅香の退院が決定したので、年末に黒田さんのお店で、退院祝いはどうかという話になっていた。
それとは別に、個人的に今週、アメ横でシューズを買う予定があったのだった。

ビールとピクルスと頼み、浅香の入院話などをする。
黒田さんはけっこう早い時期にお見舞いに行っていた。
「大丈夫か? って思ったよ」
とのこと。
「その後、みるみるうちに回復していったみたいですよ」
「ふうん」
「で、黒田さん。浅香の退院祝い兼、忘年会的な感じで、お店を使わせていただきたいのですが」
「うちは全然構わないけど、人数がね。12人までなら座れるけど、それ以上だと、まあ、立食か」

オレが入った時はお客さんはいなかったが、すぐに年配の女性二人組、次に外人のお客さんが入ってきた。
「塚本がお客さん呼んでくれたよ」
と言われた。だといいんですが。

最初に、ゴルゴンゾーラ系のピザを食べた。
注文すると黒田さんは冷蔵庫から生地を出し、のばし、たたき、具を盛り込み、窯で焼いた。
本当に手作りなのだなあと思った。

「黒田さん、チーズに詳しいですか?」
「いやあ」
「オレ、浅香のことがなかったら、今日突然来る理由どうしようか考えていて、そうだ、黒田さんにチーズのことを教わろうと思っていたんですが」
「来ていただければ、お客さんですから」

Sサイズのピザを食べ、ビールを飲む。

外人のお客さんが注文をした。
黒田さんの奥様が応対する。
「ビア、フリー?」
「イエスイエス」
そんな感じのやりとりが背後に聞こえた。

漠時代の思い出話などしつつ、段々アルコールが回ってきた。
ビールをちょっとしか飲んでいなかったのだが、リラックスしてしまったのだろう。
「黒田さん。ピザ、やばいので、もう一つ頼みます」
「どうそ」

辛めのものを頼んだ。
オレは、チーズにもピザにもワインにもうといので、ワインはなにが美味しいかを聞いた。

「カリフォルニアワインがおすすめかな。エイリアス・カベルネソーヴィニヨンがいいよ」
「どんなんですか?」
「カリフォルニアワインがさ、畑がいいので、値段がつり上がっちゃってたんだ。それをよしとしないワイン職人が、匿名で集まって、いいワインを作ろうとしたんだよ。だから、エイリアス」
わしらはいいワインを作りたいんじゃ、という面々が、偽名で集まって作ったワインということか。
「それ、いただきます」

黒田さんはピザを作り、奥様ができたピザや飲み物を運んでくれた。

外人のお客さんが、今度はデザート系のピザを頼んだ。
奥様が応対する。

ドイツ人らしく、わたしも英語はわからないんですよと彼は説明していた。
片言のイングリッシュが交わされるその感じが、なんとも素敵で、音楽を聞いているようだった。

ラストオーダー時間少し前に、黒田さんの同級生の方がやってきた。
出張で東京に来ており、立ち寄ったとのこと。

エイリアスですっかりいい気分になっていた。
カウンターの飾りとか、近所の保育園の子供たちがくれたちぎり絵のプレゼントとか、カウンターから眺める商店街を行き来する人々とか、目に入るものが心地よかった。

9時過ぎ、お会計をしてもらう。
どう考えても、それ、半額でしょうという金額を言われる。
「え? それ、少なすぎませんか?」
「いやいや、こんなもんだよ」

お会計をして、お店を出る。
ピザ2枚も食ったのに、奢ってもらったような感じだ。

佐竹商店街はとてもいい商店街だが、シャッターが下りているお店もけっこうある。
もったいない。
ただ、コンビニがひとつもないというところは、矜持を感じる。
新御徒町駅ができ、マンションもあり、人の流れはあるのだから、もっと賑わってもいいのだが。
とはいえ、中野ブロードウェイのように、オタクの聖域みたいになるのも、ちょっと違う。
名古屋の大須商店街みたいな感じになるといいのだけど。

10時過ぎ帰宅。
風呂につかる。

1時半就寝。