アンドレイ公爵は作者の分身

今日は10度を下回ることはないらしい。昨日「たまむすび」の天気予報で言っていた。木曜以外の放送では、赤江さんの話し方が落ち着いているように感じる。

昼、味咲家でイタリアンハンバーグ定食食べる。定食屋で、イタリアンと名のついたメニューで、チーズが入ってないものがあったら教えて欲しい。

『戦争と平和』2巻、ビシバシ進む。
アンドレイとピエールの議論場面。川の渡し場にて。
ピエールは、尊敬しており、自分より優れていると思っている大好きな友達が、若くして人生が終わったかのように考えているように見えることが、気の毒でならないのだ。
アンドレイ公爵は、ピエールの理想主義的な言葉を論駁する頭脳はあったが、不思議と友の言葉を否定することはなく、無言で聞く。そして、その思想はピエール自身を導いたよりも、アンドレイ公爵に、より現実的に作用する。
ボルコンスキイ老公爵と、妹のマリアは、ピエールの善良なところが好きになる。ボルコンスキイ家とピエールの相性はとてもいい。
ニコライは連隊に戻り、実家に帰った時と同じ安らぎを感じる。デニーソフとの友情は深くなっていく。
隊の補給が行き届かなくなり、デニーソフは味方の補給物資を強奪する。釈明に出向くと、かつて自分の財布を擦ったテリーニャンがふんぞり返っていた。てめいの仕業かとデニーソフはぶち切れ、波動拳を連発。軍法会議にかけられそうになるが、敵の狙撃兵に足を撃ち抜かれた機会を利用し、野戦病院に避難する。

ニコライのイメージは、ヘミングウェイと重なる。ヘミングウェイは、おのれをちょっと優しいドーロホフくらいに見立てていたかもしれないが、いやいや、いやいや、ニコライだろう。そういえば、ヘミングウェイの短編に出てくる作者の分身的人物の名前はニックだ。ニコラスの略だ。ニコラス≒ニコライでしょう?

Amazonで買った筋膜リリース用のフォームローラーが今日届くはずだった。昨日メールが来た時に、配達時間を今日の夜7時から9時に設定していた。しかし、夕方家に帰ると、不在票がポストに入っていた。朝の10時過ぎに配達に来たようだった。7時過ぎにもう一度来ると思い、走る支度をして待った。
待っている間、サンドイッチを作った。スモークサーモンを細切りにし、オニオンスライスと一緒にはさんだ。ビアソーセージを、薄く切って塩を振ったきゅうりと一緒にはさんだ。
9時を過ぎても配送業者は来なかった。昨日の時間設定はなんだったのだろう。体も冷えていて、走る気も失せていた。もういいや、どうせオレなんか人間のクズだ、と捨て鉢になり、サンドイッチを食べ、ビールを飲んだ。

『戦争と平和』2巻。夜もちょっと読む。
デニーソフの入った野戦病院を、ニコライが訪れる。病棟の描写。ニコライがウルムの戦いで怪我をした時、砲台に乗せてくれたトゥーシンがいた。片腕を失っていた。デニーソフはニコライの前で散々強がるが、ニコライはデニーソフの気持ちが理解でき、ただ黙っている。大人になったのう。
そんなニコライに、デニーソフは別れ際、恩赦願いにサインをして渡す。いい演出だ。
ニコライは友人の恩赦願いを提出すべく、単身ペテルブルグへ。フランスとの戦いは終わっており、世間は講和ムードに包まれている。ボリスは出世欲の権化となっており、空気を読み、フランスの士官と談笑などしている。そこへやってきたニコライは、前線帰りで、かつ、野戦病院を見てきたばかりなので、昨日の敵は今日の友というふうに、すぐには順応できない。幼なじみのボリスの野郎はなんだか俺が来たことを迷惑がってやがるしな。くそっ。こうなったら陛下に直接請願するぞ。褒められるかもしれん。
請願は、なんという大胆なことを、の、ひと言ではねつけられる。
アレクサンドル陛下は、ナポレオンと一緒に歩き、談笑していた。ニコライは、見物人に混じってそれを見てしまい、どーん、と落ち込む。イメージぐるぐる。敵と仲睦まじく歩く陛下、野戦病院の患者たち、デニーソフ。ニコライ、ワインを二本痛飲。そして、なにか言った士官に、陛下の考えを誰がわかり得ようかと逆ギレする。
アンドレイ公爵は、ピエール来訪がきっかけとなって、農奴解放を実現する。それも、ピエールよりはるかにうまく成し遂げる。やがて、隠棲していることに物足りなくなり、再び首都・ペテルブルグに出る。そこで、スペランスキーと邂逅し、彼の知性に、反発と感嘆を交えつつ惹かれていく。

スペランスキーは実在の人物だ。本作で実在の人物とのやり取りが多いのは、アンドレイ公爵だ。クトゥーゾフ、バグラチオン、ナポレオン、アラクチェーエフ、スペランスキー。
アンドレイ公爵はトルストイの分身のようなものだという意見がある。この意見を全面的に肯定して読んでいくと、トルストイはアンドレイ公爵の姿を借り、虚構の中で歴史上の人物を検分し、時に議論を挑んでいることになる。
考えれば考えるほど、そう思えてきた。というより、そう思って読んだ方が、数段面白い。