自転車で岩井海水浴場へ

4時半起き。昨夜たくさん食べたので腹は減っていなかった。

リュックに、水着、タオル、耳栓、マリンシューズを入れ、マラソン用のウェアに着替える。長袖。

5時35分に家を出る。今日は、自転車で千葉の岩井海岸まで行くつもりだった。
距離は、久里浜のフェリー発着所までが63キロ、浜金谷から岩井までがおよそ10キロ。泊まりではないので同じルートを帰ってこなくてはならない。往復140キロ以上ある。
そんな長距離を、クロスバイクなんかで大丈夫だろうかという不安はもちろんあったが、ダメなら引き返せばいいやという気安さと、何としても行ってみせるという覚悟の二つがあった。フルマラソンの時に似ている。

1時間か1時間半走っては休もうと思った。
環七を南下し、駒沢オリンピック公園の横を通り、自由が丘、田園調布、丸子橋を走る。

橋の下に、国旗を翻す一人暮らしの人がいた。

日吉を過ぎたあたりで1時間以上経過していた。まだ全然疲れていなかったが、水分補給はまめにしておこうと思い、ちょうど1時間半経った時点でコンビニに入った。菊名だった。

麦茶を飲み、15分ばかり小休止し、横浜市内方面へ。

都市部の道は土地勘がないものにとってはわかりにくく、Googleが示すルートは最短距離ゆえに脇道に入ることが多いため、市の中心部を抜けるまで何度もスマホを見なければならなかった。
ちょっと前にスマホホルダーを買って、すぐに取ってしまったが、こういう時は必要だ思った。いちいちリュックから出して地図を検索するのが面倒くさかった。

金沢区に入ったあたりから曇り始め、磯子からは雨が降りだした。

金沢八景で二度目の休憩。エナジードリンクを飲みたかったのだが、ローソンにはなかったので、セブンを見つけてそこで買った。

この時点で時刻は8時半を過ぎていた。久里浜のフェリーは1時間に一本出ている。9時20分のフェリーには到底間に合わないだろうと思ったので、10時20分のを目指し、マイペースで向かうことにした。

横須賀へのトンネルをいくつか抜け、そこからはGoogleのお勧めルートは取らず、海岸部を東から迂回するようにして久里浜に向かった。

9時40分過ぎにフェリー乗り場に着いた。

横須賀市に入った時にやんだ雨がまた降ってきた。まるで雨雲がオレを追いかけてくるようだった。

10時20分に乗船。

40分で千葉の浜金谷へ。

昼を先に食べておこうと思い、鯵フライで有名な「さすけ食堂」に向かったが、開店間もないというのに行列ができていた。時間がそんなにないし、今日は食べることが目的ではないので、スルーし、保田の「ばんや本館」に向かった。

しかし、ばんや本館も、とんでもない人数の順番待ちとなっていた。受付シートに名前を書く気がまったくしなかった。お盆の休日だし、今日はどこもこんなものかなあと思いながら港をフラフラしていると、「ばんや新館」というのが目に入った。

行ってみると、本館よりも待ちの人数ははるかに少なかった。名前を書くとすぐに呼ばれた。おそらく、新館は食べログに乗っていないため、ノーマークになっているのだろう。同じ旅館が経営しており、メニューは同じだった。

名物のなめろうと、さざえつぼ焼きを頼んだ。

どちらも、まずくはなかったけど、感動的というほどではなかった。特にサザエのつぼ焼きは、きちんと身がスライスされていて食べやすかったが、それゆえ、ほんとにここの海でとれたんかい? 市場で加工済みのを買って来たんちゃうんかい? という、はしたない疑念をいだいてしまった。

食べ終わった時点で12時前だった。岩井へ向かう。

富楽里・道の駅へ行き、トイレで水着に着替えた。Tシャツを忘れてしまったので、上はマラソンウェア、下は水着という珍妙な格好になった。
道の駅には、メダカやカブトムシが売られていた。

岩井駅へ行き、コインロッカーを探すが、なかった。そこに貴重品を入れて海で泳ごうと思っていたのだが、作戦失敗だった。考えてみれば当たり前だ。なぜ観光地である岩井駅にコインロッカーの必要がある。

岩井には父がいた会社の保養所があり、3歳の時から13歳の時まで、夏になるとよく行った。
そして大学時代、夏合宿というのがあったが、5回行ったうち3回は岩井だった。今回の来訪は、大学時代以来となる。

まず、保養所があったところへ行ってみた。

保養所のあった場所は「澤きん」という旅館の駐車場になっていた。偶然にもそこは、大学三年生の時に合宿で泊まった宿だった。
向かいは「川きん」という旅館の駐車場で、昔、ここの先にはぶどう畑があった。4歳の時、なっているぶどうを食べさせてもらったが、ものすごく酸っぱかったのを覚えている。この時は、行きの車で酔って吐き、カニに指をはさまれて泣いた。

海に向かい、泳ぐ場所を探した。しかし、財布の入ったリュックを持っていたので、いい場所を見つけるのが大変だった。海の家に預けて泳ぐほどの時間はないし、シートもなにも持って来ていないので、砂浜に直にリュックを置いて泳ぐのは避けたい。

結局、ビーチと民宿街を自転車で40分くらいうろうろすることになった。これなら初めから海の家に荷物を預ければ良かった。

海水浴場の南側に防波堤があり、ビーチに面した両サイドが岩で護岸工事がされていた。そこは人も少なく、荷物を置いても砂まみれにはならなかった。自転車を止め、ウェア、グローブなどを干し、防波堤に向かった。岩は斜めになっていて座りやすかった。しかし、座ったとたん雨がざーっと降ってきた。またしても雨雲め、オレを追いかけてきたのか。ふて腐れた気分になり、しばらく飲み物を飲んだ。

荷物が濡れるといけないので、カバーを出してかぶせた。このカバーが蛍光色のため、岩の上でとても目立った。これなら海で泳いでいても、常に荷物が確認できると思った。雨のやろう、降るなら降りやがれ。おれは海に入るかんな。ざまあみろ。

海に入った。荷物はとてもよく見えた。防波堤には何人か人がいたが、岩に降りてわざわざおれの荷物を盗もうとする者はいなかった。いたら、とても目立っただろう。「てめー、おれの荷物に何しやがる」とか怒鳴ったら、ビーチの客がみんなそっちを見る。よし。大丈夫だ。

しかし、泳がなかった。それより、背浮きをして波間に漂っていた方が心地よかった。空は雨雲がいつの間にか消え、太陽が再び照りつけていた。空だけを見ながら浮かんでいると、方向感覚がよくわからなくなり、気がつくと変なところで浮かんでいたりした。

小一時間そうやって、浮いて過ごした。大変気持ちよかった。

3時前に上がり、トイレで顔を洗った。水着はまだ着替えず、乾くのを待った。
帰りのことを考えた。浜金谷のフェリーは、4時台のに乗れるだろう。すると久里浜に5時頃着く。そこから家まで走ったとして、帰宅予想時刻は9時過ぎだ。温泉に入って行きたかったのだが、それをすると帰宅は11時頃になってしまう。それに、風呂に入っても走ることでどうせまた汗だくになってしまう。意味がない。このまま帰ろう。
グローブとマラソンウェアを着た。

道の駅きょなんで、水着を着替えてフル装備に戻った。びわソフトクリームを食べてから浜金谷に向かった。

浜金谷には4時少し前に着いた。次のフェリーは4時40分発だった。トイレに行き、麦茶を飲んだ。500mlのペットボトルを一息に飲み干した。

鋸山が見えた。海側から見るのは初めてだった。

4時40分に乗船する。船の先頭の席に座ったが、日の光が直接さしてきて暑かった。眠気を催し、座っている間うたた寝した。久里浜に着く少し前に席を立ち、うろうろして、景色を見たりした。船と一緒にカモメがついてきていた。客が投げる食べ物目当てなのだろう。

久里浜からは、行きの時とは違い、Googleマップのルートに忠実に走った。横須賀線と平行に衣笠まで走るルートだったが、これが大失敗だった。線路が北に曲がるあたりで、ルートも線路沿いに北に曲がったのだが、幹線道路から細道になり、急勾配を上がることになった。ギアを最も軽くして、ひーひーいいながら上って下がった。そこに自販機があった。マウンテンデューのグレープ味があったので飲んだ。

そして再び線路沿いに進むが、また急勾配の上りがあった。今度のは登山レベルの角度で、上りはひーひーひーひーいいながら何とか上がったが、下りはまるで断崖のような角度で、のったまま降りるのは危険だったので、自転車を持って降りた。
降りたところから幹線道路に入り、少し進むと横須賀駅の前だった。ホッとしたが、朝来たルートの方が山越えがなかった分早くて楽だったよなあと思った。

そこからは16号を北へ走る。富岡東のローソンで走行時間が1時間半になった。休憩する。エナジードリンク、ここのローソンにもなかった。サントリーのPEAKERという美味しい水系のやつだけがあったのでそれを飲んだ。

7時前だった。日は暮れていた。16号を横浜市内方面へ。

みなとみらい大通りから東神奈川手前の線路をくぐり、東急東横線沿いを走り、来る時に寄った菊名のコンビニを過ぎた。日吉を過ぎたところで1時間半が経過したので、その先のミニストップで麦茶を買って飲んだ。

8時半だった。自宅までは22キロだった。

丸子橋を渡り、田園調布を通り過ぎた。環八の歩道橋を、自転車を持って渡った。朝もそうやって渡ったのだが、この時は疲れていてしんどかった。

自由が丘を過ぎ、駒沢オリンピック公園を過ぎ、246を渡って環七に入った。若林から環七を北上する。ここまで来れば残りは5キロだった。より慎重に運転した。

帰宅時刻は10時前だった。

行きよりも時間がかかったのは、衣笠から横須賀への山越えがあったせいだと思う。あれでずいぶん体力を削られた。しかし、どうにかへたることなく走破できた。
走行距離を調べると、回り道した分を足して、往復150キロ以上あった。
消費カロリーは7000kcalくらいあった。なのに、今日は昼飯に観光定食を食べ、おやつにソフトクリームを食べ、帰りの船でリュックに入っていたビスコを食べただけだった。
給水は時間を決めて行った。マラソンの感覚でやったので、正しいかどうかわからないが、脱水症状にはならなかったようだ。水分だけでなく、エナジードリンクを間に混ぜたので、それがハンガーノック防止になっていたかもしれない。モンスターエナジーは、マラソン前に長い距離を走る時に利用する。あれは効くけど、エナジーが枯渇した時に飲むものだ。

シャワーを浴び、ビールを飲んだ。腹は空いていなかったが、家にあったドーナツとクッキーをちょっとずつ食べた。

初心者がクロスバイクで150キロ走るのは無謀だったが、マラソンの経験が生きていたかもしれないと思う。体力的にというより、長時間何も考えずに進むことにある程度慣れていた。 自己満足。自慢。自画自賛。

こういうサイクリングをするとロードバイクが欲しくなる。もっと快適で、もっと速くて、もっと遠くまで行けるのだろう。自分は今、遠くへ行ける人達の手前にいて、間には壁が立っている。いつか乗り越えることになるのだろうか? わからない。