ぽっかりあいて東京湾半回り

一日ぽっかりあいてしまった。それで、12時に家を出て、前から行きたかった『亀戸餃子』を食べに行くことにした。

阿佐ヶ谷駅に行く前に図書館に寄った。本を返しがてら新しい本を借りるつもりだったが、今日は休みだった。本を返却ポストに返し、高円寺に向かい、途中のブックオフで文庫本を二冊買った。安部公房『箱男』と、ジェイムス・ジョイス『ダブリン市民』

高円寺からJRで亀戸へ。乗っている間『箱男』を読む。

2時前、亀戸到着。この駅で降りたのは高校時代以来かもしれない。

『亀戸餃子』は北口を出てほんの少し右に入ったところの路地沿いにあった。中に入りカウンターに座ると、飲み物の注文を聞かれた。瓶ビールを頼んだ。ビールとコップがきてすぐに、一皿目の餃子が目の前に置かれた。一人二皿以上注文しなくてはいけないらしい。

餃子のサイズは普通で、中は野菜が多め。味つけは薄く、辛子をつけて醤油で食べるとちょうどよかった。塩分が少なそうだったので、たくさん食べられそうだった。
五皿食べたところでビールがなくなった。食べ物のメニューは餃子のみだったが、飲み物は豊富にあった。電気ブランがあったのが、下町らしくていいなと思った。店員の中国系女性と、焼き作業をしている店主が、差し入れを持って来た常連のおじさんと会話をしていた。ずるずる長引かない、いい会話だった。

店を出て、さてどうしようと考えた。時刻は2時15分だった。先日行った福生のパチンコ屋と同じように古い台を置いている店が巣鴨にあるらしく、そこへ行ってみようかと思ったが、スマホで置いてある台を調べると、あまりそそられなかったのでやめにした。そこで、せっかく東京の東の方にきたのだから、電車でどんどん東へ行ってみることにした。

総武線の千葉行きに乗り、『箱男』の続きを読んだ。新小岩で快速に乗り換えた。千葉駅で降り、構内の売店でウイスキーのポケット瓶を買い、内房線に乗り換えた。

そのあたりで、浜金谷からフェリーで久里浜に渡ろうと決めていた。時刻表通りだと、夕方5時半くらいにフェリーで東京湾を渡ることになる。もし夕焼けが見られたら、相当いい眺めに違いない。

木更津と君津で高校生の乗客が降りた。そこから先は降りる客の方が多くなり、車内はだんだん空いていった。

浜金谷には4時半に着いた。駅の構造は、昔よく行った岩井駅と同じだった。

ホームから歩道橋を使って駅舎に渡り、改札でSUICAのタッチパネルに触れた。チャージが900円ほど不足していたので、窓口で払おうと思ったら、少し前に営業を終えていた。料金は翌日、浜金谷駅の窓口に払ってくださいと書いてあった。

払いようがないので、精算は別の駅ですることに決め、無人の改札を出た。昨年自転車で走った県道をフェリー乗り場の方へ歩いた。途中、セブンイレブンに寄り、炭酸水を買った。

フェリー乗り場は閑散としていた。10月の平日夕方はそんなものなのだろうと思った。
売店でソフトクリームを買って食べながら、護岸沿いを歩いて海を眺めた。今年は海を見る回数がいつもの年より多いかもしれない。

5時過ぎにフェリーが到着した。乗船し、日が沈む方向がよく見える席に陣取った。日はすでにだいぶ傾いており、出船時刻の5時20分には沈んでしまっているだろうと思った。
そして、夕焼けができるなら、まさに今の時刻のはずだと思ったが、太陽から上の方の空は、くすんだ青色のままだった。そのうち、太陽は海に沈み始めたので、写真と動画を撮った。出船する数分前に太陽はすっかり沈んでしまった。

出船してから展望デッキに出た。船尾から浜金谷の方角を見ると、満月が浮かんでいた。少し前に沈んだ太陽と、大きさがほとんど同じに見えた。

カモメが二羽、船と一緒についてきていた。

6時過ぎ、久里浜港到着。乗り場のビルを出てすぐのところにバス乗り場があった。10分ほどして京急久里浜行きのバスが来た。

京急久里浜から横浜まで京浜急行に乗った。横浜で降り、JRの窓口でSUICAの精算をし、湘南新宿ラインで新宿まで乗った。新宿から高円寺まで中央線に乗った。高円寺を降りたのは8時過ぎだった。

オーケーストアに入り、買い物をしようとしたが、デリカコーナーに売っているものがほとんどなかったので、何も買わずに店を出た。
新高円寺のマックに寄り、ナゲットとポテトのセットを買い、帰宅した。

夕食に、買ってきたナゲットとポテトの半分を食べた。

今日一日移動したルートは、東京湾の上半分をぐるっと回るコースだった。なんでそんなことをしたのかわからないが、のんびりした気分になれて、結構楽しかった。

『箱男』読了。
書き手は一人しかいないと思って読まないと混乱する作品だった。というよりも、読み手に対し、書き手が複数人いるように思わせる書き方がされているという感じだ。
書き手とは箱男のこと。頭から段ボールを被って暮らしている。彼はノートに様々なことを書いている。小説は、彼のノートを抜粋しているという体裁だ。しかし、抜粋ではないスタイルで書かれた章もある。なので、素直に読んでいくと、今語っているのは彼なのか、それとも他の人物なのか、わからなくなってくる。
だからあえて、すべて彼が書いていると思って読んだのだが、そうすると箱男は、安部公房の姿と重なってくる。

難解な作品だったが面白かった。箱男、看護婦、医者の三角関係に、『方舟さくら丸』の三角関係と似たようなものを感じた。