存在の価値がゼロの駄目人間

なぜなら未明に起きて旧江戸川へ釣りに行こうと思ったからである。

3時半に起きた。ルアーは昨夜のうちに選んでおいた。道具類も準備しておいたので、3時40分には家を出ることができた。

外はさすがに暖かいとは言いがたかったが、3月6日や7日のように手がかじかむほどの寒さではなかった。

旧江戸川の雷公園前から河原に下りた。周囲にアングラーは一人もいなかった。満潮時刻は4時過ぎで、流れは徐々に下げ始めている様子だった。
先日、村のチンピラみたいに浮かれ騒ぎながらシーバスをバカバカ釣っていた連中が釣っていた場所で釣りはじめた。ゴロタ石の上縁部に沿って狭い間隔で木が数本生えている場所だ。

土曜に買ったノガレ120Fから投げ始めた。アップクロスにキャストしてデッドスローで引いた。ルアーを引いている感触がなく、あっという間に手元にルアーが寄ってきた。全然飛んでいないのだなあと思った。

自分のいた場所から上流30から50メートルほどの岸際で何度もボイル音が聞こえた。そこがポイントということではなく、オレが下流側に下りて来たので、気配を感じてそこに移動したのだろう。
ボイルのあったところより上流に投げて、ルアーを引いてくるようにしてみたが、ルアーがそこまで飛ばなかった。かえって魚を散らしてしまいそうだった。

下流も同じく50メートルほど離れたところでボイルがあった。そこなら、やや流心に投げてから糸を送り込めば流し込めるかもしれないと思った。
向きを変え、ロッドを振りかぶり、ダウンクロスでキャストした。その瞬間、後ろで引っかかった感触があり、ラインが切れた。振り向くと、ゴロタ石の上の方に生えているさくらの木の先端が川に向かって垂れ下がっており、そこに引っかけてしまったようだった。ラインはリーダーではなくPEラインのところで切れていた。

ヘッドライトを使い、枝を引っ張り、引っかかったルアーは回収した。川に背を向けてそれをしている間、背後でボイル音が聞こえた。

リールを交換し、ルアーをエリア10に付け直した。

木が生えているところの下流50メートルにあったボイルを狙うため、そこからさらに30メートルほど下流に移動した。そこから、さっきいた木の前辺りを狙って投げた。何投かしてみたが反応はなかった。
そこから下流でまたボイル音が聞こえたので、向きを変え、下流に流すようダウンクロスで投げた。しかし、ゆっくり引いていたら流れによってルアーが接岸してしまい、ゴロタ石に引っかかってしまった。

リールを巻きながらゴロタ石を移動し、引っかかった場所を特定した。石と石の間にラインが入っているのが目視できた瞬間、ラインは緩み、ルアーが回収できた。

そうやってゴロタ石の上をがさつに移動したことで、下流側にいた魚をまた散らしてしまった。

木の上流側に移動し、3月6日に釣りをしたポイントから下流に向かって投げた。投げた瞬間、手元でラインがガイドに当たる音が聞こえ、変な感触が手に伝わってきた。ルアーは全然飛んでいなかった。ラインを巻くと、リールがバックラッシュを起こしてラインがからまったことが分かった。見た瞬間、ほどけないと判断した。

最初につけていたリールに付け替え、ヘッドライトをつけ川に背を向けてリーダーを結んだ。PEラインを口にくわえてリーダーを編み込んでいると、真後ろからボイル音が何度か聞こえた。

魚のやつに、「志村!うしろ!」と同じことをされていた。

リーダーを結び直してから、再びノガレをつけた。アップクロスで投げ、デッドスローで引いた。釣りはじめるとボイル音はなくなり、魚が遠ざかっていくようだった。

雨が降ってきた。

ボイル音より遠くに飛ばしたい一心で、VJ-16をつけてみた。アップクロスに投げると、さすがによく飛んだ。
二頭目、ボイルがあった上流の岸際よりさらに遠くに投げようとした。岸際を狙うように投げたのだが、オレのノーコンキャスティングでは、そんな微妙な場所を狙うのは不可能だった。ルアーが左にそれ、ゴロタ石の真上に落っこちた。ルアーはまた石と石の間に落ちて引っかかった。

ルアーを巻きながらゴロタ石ゾーンを移動し、引っかかっている場所を見つけた。ヘッドライトで石の間を照らし、ラインを切って石の間に落っことさないよう気をつけてルアーを回収した。

雨のため、ゴロタ石が滑りやすくなっていた。こうなると釣りの続行は難しかった。時計を見ると5時20分になっていた。起きてから2時間近く経っていた。その間オレは、釣りをしたというより、ルアーをあちこちに投げ散らかしては引っかけて、どたどた歩いて回収しては釣り場を荒らし、雨でずぶ濡れになっただけだった。

納竿した。

実家に帰り風呂に入った。湯につかりながら釣りの反省をした。

反省とかいうレベルではない。おのれの下手さ、がさつさ、無神経さ、顔の醜さ、性格のいびつさ、人を不愉快にするぼそぼそ声、恨みがましい三白眼、この世にいるだけで人類の偏差値を下げる頭の悪さが、ほとほとイヤになってしまった。

こんなんで釣りを続けていたって、シーバスなんか釣れっこない。誰が許さないってオレが許さない。

一つ気になったのは、水面に背を向けてしゃがみ、リーダーを結ぶなどの作業をしていると、オレのいる場所の正面からボイル音が聞こえたことだ。
「志村!うしろ!」かと思い、おい魚類、てめえらふざけんじゃねえ、と、作業中頭に血をのぼらせていたのだが、あれは、しゃがんだことでオレの姿が水面に影を落とさなくなり、シーバス達が「あの粗忽で愚鈍な釣り人がいなくなったぞ」と判断したから、寄ってきたということだろう。
ということは、ゴロタ石の下に下りてすぐにキャスティングをしても、警戒して遠ざかったばかりのシーバスにルアーを投げることになるんじゃないか。いくらそっと下りたとしても、人影が水面にさすのはどうしようもない。下りたらしばらくじっとするなどして、自分の存在を風景に溶け込ませてからルアーを投げるべきだったのではないか。

それはそれとして、木に引っかかったのは論外。ていうか、死刑だ。

朝飯にご飯、いわしの缶詰、大根おろし。
午前中、ゴッド氏が依頼してきた、秀子に規制をかける改修をする。
昼、王将で天津飯と餃子。
午後、秀子改修を終える。
夕方サミットで買い物。コーラ、マスタード、茄子、オールブラン買う。
6時40分帰宅。

TSUTAYAで借りたDVDを返却するためにポストに投函しがてら近所のトラックで走ろうと思い、ジャージを着て外に出た。途中、郵便局に曲がる道を通り過ぎてしまったが、ポストなんて走っていればそのうち見つかるだろうと思い、郵便物を持ったまま走り続けた。しかし方南通りに出ても見つからず、方南町方面に走ってようやく道沿いにあるのを見つけた。そういうことだからシーバスが釣れないのだろう。

トラックまで走る。その時点で2キロ走っていたので、もう2キロをトラックでペースを上げて走り、家まで1キロをゆっくり走った。

夕食にオールブラン、オートミール、豆乳。

編み込み作業する。糸が増え、裏側の糸の絡まり方がすごいことになっている。編みくるむどころの騒ぎではなくなってきた。

Youtubeでピンク・レディーの「ウォンテッド」を聞き、やはりこの曲が一番いい曲だと再認識する。すべてにおいて力強い。

そのまま、『オレの好きなガールズ曲』を検索しては順番に聴いた。
平山美紀「真夏の出来事」
太田裕美「木綿のハンカチーフ」
松田聖子「Rock’n Rouge」
森高千里「渡良瀬橋」
モーニング娘。「真夏の光線」
木村カエラ「Magic Music」

続けざまに西城秀樹の曲を検索しては聞いた。
「セクシーロックンローラー」
「ボタンをはずせ」
「ブーツを脱いで朝食を」
「炎」

ヒデキの全盛期は1976年から78年だなあと思う。一つ一つの曲が、ミュージカルナンバーのようだ。

最後に、西荻窪の『風神亭』のことがふと気になり検索したら、2020年の2月に閉店したことを知った。残念だ。

思いつくままに曲を検索し、一緒に歌いながらウイスキーを飲むなんてことをしていたら、そら見ろ、夜中の3時じゃないか。だからシーバスが釣れねえんだよ。