『土を喰らう十二ヶ月』見た

地下鉄で現場へ。間違えて買った区間を使う。ケチったわけではなく、夕方の予定を考えるとそれでよかった。

現場での作業をいつものように終え、夕方5時50分、シネスイッチ銀座へ。

『土を喰らう十二ヶ月』見る。

何も食べず空腹で見た。さまざまな料理を作る場面で、否が応でも空腹を意識させられたが、飯テロというのとは違った。里山の食材、手作りの干し柿や梅干し、かまどで炊いた米、手作りの味噌、畑の作物、などなどを、日本家屋で一人暮らしをする作家のツトムさんは、丁寧に調理し、食べてゆく。

松たか子は編集者役で、半恋人みたいな微妙な関係だが、ツトムさんが倒れて入院するエピソードのあと、気持ちのすれ違いが起き、去っていく。

そのすれ違いは、死を直視して生を知り、それを全うする決意をツトムさんがしたことで起きたのだと思う。勝手だ、と、松たか子演じる編集者は言う。そうかもしれない。だが、ジュリーが見つけた生は、同時に死でもあり、死は必ず一人で向き合わないといけないものだ。

だから、一緒には暮らせくなったのだろう。そう解釈した。

通夜振る舞いの場面が最高だった。客が多すぎ、ジュリーは「だめだ、とても足りない」と言い、追加の作物を畑に取りに行き、胡麻豆腐を作る。

食べたい、と思った。

棺桶も遺影も通夜ぶるまいも、お経でさえも自前。手作りのおとむらい。こういう葬式はいい。

観客は女性が9割だった。着物で来た女性がいた。ジュリー様のめでたき初日。着物を着て銀座の映画館に見に行く女。六十代より上に見えたが、マブイなあと思った。