引き継ぐ経緯

午前中、タイガー氏来たが、今日も早退する様子だった。挨拶されたので、はなむけの言葉らしきことを言った。ここはタイガーさんに合っていないが、それはエンジニアの力量としてではない。おかしいのはここ。役に立つ場所は必ずあります云々。

もともとメンタルがそんなに強くない人らしい。折り紙を折る仕事だと思って来たら、重さ10キロの石を運んでピラミッドを作ることなっていたため動転し、そのままズルズルきていたのだろう。とっとと見切って移った方が良かったが、踏み切れなかったのもまた弱さゆえかもしれん。

で、そのツールを引き継いだ。人の気持ちがわからず腹芸が通じない、無神経でがさつで、満足にシーバスも釣れないオレが。

無神経でがさつでシーバスが釣れない人でないと務まらない現場というのは、どこかがおかしいところがあるはずだ。しかし、システムを憎んで人を憎まず。働いている個々の人に問題があるわけではない。それらの人を導き差配するシステムが、どういうわけかおかしい。マリアナ沖海戦の日本海軍や、インパール作戦の日本陸軍みたいになっている。

オレも渦中にいたら、組織の決まりに抗えず、加担者になっているのだろう。

昼、『豚と脂』でラーメン。新しくできた二郎系の店。店員の応対が丁寧だった。

午後、引き継いだツール内部改修作業。かなり大規模に改修している。その作業も大詰め。

このツールはオレが現場に赴任する前からある。オレのひと月前に配属された落葉さんが担当者になっていた。

本来の担当は鬱氏という人だった。しかし鬱氏は、夏の終わりに体を壊し、長期間休む状態となっていた。それで急遽、ツール担当者を探さねばならなくなり、落葉さんが配属されたのだった。

鬱氏はそのツール以外にも色々見ていた。しかし落葉氏はそのツールを理解するのに手一杯だったので、オレが他のツールをやるためにやってきた。

しかし、オレがきたのと同じタイミングで鬱氏は復帰した。オレは、鬱氏がいなくて大変だから来たのに、鬱氏復活。オレの存在意義はいきなり揺らいだ。

もっと揺らいだのは落葉氏だった。

鬱氏は復帰早々、落葉氏が改修した箇所について、なぜそのようにしたのか質問してきたという。これこれこういうわけですと落葉氏が答えると、鬱氏は「ふっ…」と笑ったそうだ。

落葉氏はキレた。

実は落葉氏も、メンタルが強くなかった。しかし、タイガー氏とは違って、追い込まれるとキレる形で自分を守るタイプだった。

結局、そのツールはそのまま落葉氏が担当することになったのだが、落葉氏は鬱氏を深く恨み、作った部分を否定し、ツール全体をすべて自分のやり方に染め上げようとした。

そういうのを近くでずっと見ていた。落葉氏の怒りはもっともだと思ったし、オレも鬱氏に、なんでこいつはこんなこというかなあ、ということを、言われたことがある。いや、言われてない。メールで送ってきた。

そのような不健全なもやもやがあるまま、運用は続いた。

やがて時が経ち、鬱氏は別現場に移転となった。

落葉氏も、現場のテナントが移ることをよしとせず離職した。

タイガー氏は、ツール担当の仕事を落葉氏から引き継いだのであるが、もとからメンタルが弱いのに、怨念のこもったツールを引き継いだのだから、さぞかし、しんどかったろなあと思う。そして、そのしんどさは、エンジニアのしんどさではないのだ。

そういうことが上の人間にはわからない。だから、足がついていないという理由で、ジオングの実戦投入を見合わせるのだ。

現在のオレの仕事は、まず、落葉氏の怨念がこもった部分を整理することである。しかし、他の人には、何をやっているかわかるまい。

夜、ふるさと納税の返礼品が届いた。焼酎5本セット。