落語会聞きに浅草へ

朝、ホットドッグ食べる。
先週、通販で買った『青ばん』が届いたので、青ばんマヨネーズをホットドッグのソーセージに塗って食べた。届いた青ばんを包装していた段ボールには、青木亞一人くんのサインと「ありがとうございます!」のメッセージが書かれていた。

正午ちょっと過ぎに家を出る。
浅草へ、かはず亭みなみさんの落語会を見に行く。

去年会津に行った時、行きの浅草駅で東武特急に乗る前に、次の休みにでも浅草を散歩しようと思った記憶がある。結局、「次」は日延べされて現在に至るが、今日がその「次」であるのだと思うことにした。

みなみさんの落語を聞くのは初めてだった。今回の会は立川談四楼と風間杜夫の落語も聞けるので、情報を入手した次の瞬間、チケットを予約していた。

浅草駅には12時半頃に着いた。防空壕みたいな地下街はまだ残っていた。

仲見世の、浅草寺に近いところの店で、揚げ饅頭を一つ買った。「ひとつ160万円」と店のおばちゃんが言ったので、財布から200円を出して渡すと、おばちゃんは「はい200万円お預かりの、お釣り40万円」と言って、お釣りの40円をくれた。

門前の広場で揚げ饅頭を食べた。その辺りは昔、鳩がいっぱいいた。エサ売りもいた。エサを買った小さい女の子が、待ちきれないハトに追いかけられ、背中や肩にまで乗られて悲鳴をあげるのを見たことがある。90年代の終わり頃だ。
今日はハトの姿を見なかった。目の前にある浅草はその頃と違って見えた。人が増え、年齢層が若返ったようだ。

落語を聞く前に昼飯を食べようと思っていたが、時間が中途半端だった。落語には早すぎ、食べるには遅すぎた。で、会場の雷5656会館までゆっくり歩くことにした。

花やしきの前を通った。チケット売り場にはそれなりに人が並んでいた。遊園地という形態の施設自体、オワコンに近いものになっている昨今だが、花やしきは昭和の時代からその『しょぼさ』によって遊園地カテゴリーからはみ出ていた。そのことでむしろ、今の時代に生き残っているように見えた。

花やしきの東側を北に歩いた。松永光弘のステーキ店前を通り過ぎ、信号を渡ると、そこが雷5656会館だった。開場時刻間際になっていた。

エレベーターで7階に上がった。

座席指定だった。チケットの『二』という文字を数値だと思って、前から二列目に座った。しかし、それは『いろは』の『に』という意味だった。その席を買った人が来て分かった。

前から四列目に移動した。

2時開演。
まず談四楼の弟子が一席やった。その次がいきなり談四楼で、『芝浜』だった。さりげなく品が良く、きれいな話だなあと思った。

次がみなみさんだった。彼女は『陸奥間違い』をやった。権助が日本昔ばなしに出てくる人みたいだった。序盤は固かったが、権助が勘違いしまくるあたりでのびのびとしてきた。

最後が風間さんだった。マクラで宝くじの話をしてしっかり笑わせてから『宿屋の富』をやった。口跡が出来上がっていて、表現フォーマットがたまたま落語であるという感じの、自在な喋りだった。楽しかった。

終演したのは4時前だった。

外に出て、どこかで食事をしようと思いながらぶらぶらする。松永光弘の店はランチ営業が終わっていた。

花やしきの西側からホッピー通りを歩いた。ここでも、若者の数が増えていると感じた。

途中で、何人かで歩いているあんちゃんたちの一人が、店の前で唾を吐いたとかで、店員のあんちゃんが彼らを捕まえて、「ふけ」と詰め寄る場面に出くわした。そりゃそうだ、と、店のあんちゃんの心情を慮りつつも、かといって拭くものもないだろうし、色々、間の悪いことになってるなあと思った。

その後どうなったのかは、見届けなかったのでわからないが、なぜかそれほど悪い気はせず、『活気のある町あるある』イベントだなあと思った。昔の歌舞伎町、渋谷、池袋、吉祥寺、その他若者の集まる町でよく見られた場面だ。

三年前に吉祥寺をランニングした時、昨年夏に渋谷の明治通りを歩いた時、秋に新宿西口を歩いたとき、それぞれ、同じ感想を抱いた。「昔に比べて寂れたなあ」

しかし今日の浅草は逆だった。「なんか、若者の町化してない?」

世界各国の観光客、日本全国の修学旅行生、出張先サラリーマン、休日を楽しむ都民県民、老若男女、さまざまな階層の人々が、迷宮のような町に集まり、何か面白いことないかとぶらぶらしている。これは、文化が生まれる状況ではないか?

例えば、今の浅草に休日常設の野外ステージを設けて、バンドが演奏できるようにすると、彼らはライブハウスの客層とは違うオーディエンスに音楽を聞かせることができるのだ。鹿児島の高校生とか。フランスから来た旅行者とか。

あるいは小劇場とかミニシアターができてもいい。何かないかな、と歩いている人が、ふらりと入れる雰囲気が、今の浅草にはあると思う。

そんな、脳内SIM CITYを楽しみながら、鰻屋を探して歩いた。しかし、特に鰻が食べたいわけでもなかったので、仲見世沿いの『とん久』でカツ重を食べた。カツの肉が薄いところが、レトロ風味だった。

田原町まで歩き、メトロで6時過ぎ帰宅。