ゲド戦記の予告編を見て

 9時過ぎに起き、近所の耳鼻咽喉科へ行く。
 症状を伝え、喉を診てもらう。
 「ポリープできてるかもしんないですね、カメラで見てみましょう」
 細いチューブを鼻から喉に通された。

 「声帯のあたりから気管支奥が真っ赤になってますね。それで、繊毛の機能が弱っていることもあって、痰が絡む状態です。お薬出しておきますから、それを服用してみてください。たぶんそれで炎症は治まると思います。もし一週間経っても症状が変わらなかったら、内科の方で気管支を見てもらう必要がありますが」
 とりあえず、薬を飲んで養生しろとのことだった。

 薬局で処方せんを渡した。
 薬剤師さんは中年の女性で、爆笑問題の田中をそのままおばちゃんにしたような外見だった。
 「初めての方ですからこれあげマース」
 と黒飴をくれた。
 薬の効能を説明してくれ、袋に入れる際、
 「早く良くなるようにライオンのシールを貼っておきマース」
 と袋にライオンのシールを貼った。
 「そして春ですから蝶々も貼っておきマース」
 さらに蝶々のシールも貼った。
 「お会計が1280円デース」
 1万円札と80円を渡すと彼女は10秒近くその場で固まり、
 「まず先におつりの800円を渡しマース」
 とレジから800円を出してくれた。
 次に奥の方に引っ込み、8000円を持ってくると、
 「はい、これがお待ちかねの8000円デース」
 と残りの8000円を渡してくれた。

 11時半帰宅。
 何十年かぶりに病院で処方された薬を飲む。
 4種類もあって面倒くさい。

 2時まで日記を書いて過ごす。
 昼飯を食べに西荻窪へ。
 北口の『夢飯』で野菜粥を食べる。

 帰りに南口のビデオステーションへ。
 『アニーホール』『アニーよ銃をとれ』DVDを借りる。
 レジで店長らしき人に、
 「すばらしい選択です」
 と言われる。
 偶然のアニーつながりをさしてのことか、作品をさしてのことかは不明。
 この店の店長は、お客さんと映画の話を交わすのが好きらしく、
 「…これは2時間以上ありまして長い!」
 とか、
 「…のシリーズはうちに全部ありますよ。そこのファイルから見てごらんなさい」
 といった声がしばしば聞こえてくる。
 映画好きの人なのだろう。

 帰宅後、冷蔵庫で寝かせておいたクッキー生地を焼き、コーヒーを飲む。
 パソコンをつけ、日記書きとプロット書き。
 5時を過ぎても外がずいぶん明るいことに気づいた。

 夜、カレーを食べる。
 うちにあったジャガイモが少し芽が出ていたので、病院に行った帰りに西友でばら売りのを一個買っておいたのだが、そっちの方が傷んでいた。

 ノートパソコンで作業中、操作を誤って、program filesフォルダにあるファイルをごっそり消去してしまった。
 おかげで日本語は打てなくなるわ、エディタは使えなくなるわで、復旧に3時間近くかかった。
 妙なウイルスで全消去になったりするよりはマシだが。

 小林信彦『唐獅子株式会社』読む。
 10年以上前に一度読んだときは、パロディの原典に詳しくなかったため、それほど面白く感じられなかったが、今日は大変楽しく読めた。

 ジブリのサイトで『ゲド戦記』の予告編を見た。
 『ナウシカ』『シュナの旅』『もののけ姫』のそれぞれの要素を抽出したような絵だった。
 面白そうといえば面白そうなのだけど、見に行くかどうかはわからない。

 『もののけ姫』においてはアシタカがうけたタタリ。
 『ナウシカ』においては腐海の果てや墓所の主。
 すでに駿パパは、『ゲド戦記』における<影>というテーマを自己流に消化し、作品化している。
 かつて方向性を見いだす光だった『ゲド戦記』は、今や駿パパにとっては役割を終えた<影>に過ぎない。

 すなわち<影との戦い>をテーマにした作品を製作しながら、駿ジュニアもまた<影>と戦っていることになる。
 作品における<影>とは意味合いが違ってくるが。