夜の河原の知久ライブ

 昼1時、日本堤近くの天丼屋へ行く。
 『土手の伊勢屋』
 人通りは少ないのに、店には行列ができており、1時間待ちとのことだった。
 辛抱して待つ。
 創業110年ということだけあって、戦前の木造家屋である店の外観は古く、店内も狭い。
 昔の日本人の体型に合った建物という感じがする。

 1時間弱待って店内へ。
 天丼には、イ、ロ、ハの3種類ある。
 ロを頼んだ。
 出てきた天丼には、巨大な穴子、同じくエビ、そしてイカのかき揚げがのっている。
 一口食べて、たれの旨さに驚愕した。
 これは、喋りながら食う代物じゃねえ。
 待った時間が1時間、注文してから20分。
 食べる時間は5分だった。

 満足してから、吉原周辺を散策する。
 台東区千束辺りはソープ街だから、隙あらば地蜘蛛のような客引きにとっつかまる。
 以前、バイクで走っていたにも関わらず、信号待ちでチラシを渡されたことがあるくらいだ。

 吉原神社と、弁財天を見る。
 弁天様は、道からは見えない角度で立っていた。
 関東大震災で死んだ400人の遊女を弔うために建立されたらしい。

 その後、マックで休憩してから浅草へ。
 サンバカーニバルをやっていた。
 昔は夜にやっていたと思うのだが、今は昼にやるらしかった。
 なぜだろう。治安関係のあれか。

 7時に隅田川沿いの公園へ。
 昨年大変すばらしかった知久寿焼ライブを見に今年もきたのだ。
 サンバカーニバルは終わっていたが、対岸でもなにかイベントをやっており、音が反響していた。
 知久さんは礼によって客の間を誰に気づかれることもなくひょいよいあるいて舞台に上がった。
 客の数は昨年の3倍くらいいた。
 おかげで、川の流れを眺め、ビールを飲みつつ、音楽を楽しむという3重快楽に失敗してしまった。
 舞台に上がった知久さんは、
 「それじゃ、乾杯」
 と言って、歌うより先にまずビールを飲んだ。
 それから、歌った。

 『金魚鉢』『夜のおんがく』『電車かもしれない』『学習』『ぎが』『むかしむかし』『らんちう』
 途中、ワタナベイビーがゲストでやってきて『おるがん』を一緒に歌った。

 9時少し前にライブは終わった。
 去年のライブは客もそれほど多くなく、ライブも永遠に続きそうな感じだったのだが、今年は人が多かったのできっちり終わった印象。
 でも、やっぱり良かった。
 来年もまた行きたいと強く思った。

 10時半帰宅。
 天丼をしっかり食べたので腹は空かず。
 しかし、歩き回ったため、ビールを少し飲んだら急激に眠くなる。
 そのウトウト中、金太郎が空き缶を木に見立てて、まさかりで木を切っている夢を見る。
 こんこんと金太郎が叩く音で、オレの左手にある切符の値段が、170円区間、160円区間、150円区間と下がっていく。
 それを防ぐために(なぜ防ぐ? 誰が防ぐ?)下の階で、どーん、どーんとなにかを叩く音がする。
 その音に合わせて切符の値段が、160円区間、170円区間と上がっていく。
 この夢が意味するのは?
 早く寝ろということだ。