夕方、下北沢へ。
ショーGEKI公演『もう泣くもんかと誓った私の瞳は涙の虜』観る。
マグで受付を手伝ってくれる松原さんが出演している。
劇場で伏見さんに会う。
制作をしているとのこと。
女性6人と男性1人の芝居。
女性の登場人物は二人。母と娘だ。
母親役は1人の女優が演じ、小学生時代から50代までの娘役は4人の女優が演じ分けた。
松原さんは新人ということで、各時代の娘に立ちはだかるライバルを演じていた。
前半は、小学生時代から30代までのシーンが時代順に展開する。
面白いのは後半になってからだ。
エピソード順に時間をさかのぼったり、過去の自分が現在の自分を励ましたり、駄目出ししたりする。
女優陣のアンサンブル演技が見事だった。
演技技術の臭みがなく、押すべきところは押し、引くべきところは引き、ボケとつっこみという枠にはまらず、瞬間的感情の流れを正直にとらえ、胸の中で育て、解き放つ。
母親役の女優さんの芝居が実に巧みだった。
泣いている娘を抱いている時など、その涙を共有して感情に流されることがなく、震える肩を叩きながら、厳しくもなく優しすぎもしないどこか飄々とした様子で、娘の状態を分析している。
その分析には、愛や甘えではなく、親密さがある。
母の胸でしか泣いてはならず、泣くごとにお金を払うという設定が、甘えを濃し取るフィルターになっていた。
泣くシーンは多かったが、それが決してお涙ちょうだいになっていない。
巧みな脚本と演出だった。
参った。
男優さんも、濃い演技を律している清潔さがあり好感が持てた。
終演後、松原さんに挨拶する。
2年ぶりの舞台に劇団の新人として参加したらしい。
久しぶりにしては、非常に達者な演技だった。
上手い人たちの中で戦う経験を積めたため、戦闘力が底上げされたのだろう。
『ドラゴンボール』でいえば、ナメック星に到着した頃の悟飯だ。
何気なく知り合いの芝居を見に行って、大当たりだったという経験は、実に久しぶりのことだ。
帰りの電車で腕組みをしつつ、役者のアンサンブル演技について考えをめぐらせた。