過去を語らず送別の宴

夕飯を食べてから何時間か経つと腹が減るが、健康のためには寝る前数時間は何も食べない方がいいという。
だが夕飯から寝るまでの時間が6時間くらいあいていると空腹感を抱いたまま寝ることになる。
冬なのでそんな状態で寝たら手足が冷えてなかなか寝付けない。

昨日も空腹のまま寝たので手足が寒かった。
起きると空腹感が耐えがたく、家に朝飯の用意がなかったので、仕事に行く途中「なか卯」でカレーうどんを食べた。
店員に「はねないように使ってください」と小さい椀を渡されたが、椀にうどんを移す時にはねたので意味がなかった。
音を立てずにスパゲティを食べる食べ方で、はねないように食べることが出来た。

仕事仕事。
今月は仕事の月と割り切る。

夕方池袋へ。
舞台美術でずっとお世話になっていた松本さんが、今月で東京を発ち、大阪へ転居することになった。
引っ越す前に舞監の田中さんと三人で飲むことになった。

西口の「ふくろ」という店で待ち合わせるが、残業のため8時近くになってしまい、松本さんと店に入るも満席だった。
別の店を探して西口をうろつき、結局「清龍」に落ち着いた。

新しい部屋は商店街に面しているらしい。
古いけれども人が通う、ちゃんと機能している商店街だそうだ。

タタキで遅れていた田中さんも加わり、話を続ける。

引っ越す動機は一つではなく、震災があって色々思うところがあり、現在のこと未来のこと思想的なことを考え、どうすれば良いのか突き詰めた結果が引っ越しであるのだろうと、話を聞いて思った。
最近は政治の話を飲みの席で積極的にするよう心がけているそうだ。
東京で演劇人と接する限り意見には多様性があり、どんな意見を述べても賛同する人はどこかにおり、むしろ自分の意見はそうではない場所で吐くべきではないかとも思ったとのこと。

12時近くまで話す。
「日々、送別飲みですか?」
「そうですね」
「いつ引っ越しですか?」
「28日です」
「商店街、コロッケ屋がありますか」
「ありますねえ」
「いいですねえ」

そんな会話をして、池袋の改札で別れた。

1時前帰宅。

松本さんと初めて一緒に仕事をしたのは2003年の春で、王子小劇場の企画で演出をした時だった。
以来王子の企画にちょこちょこ顔を出させてもらっていた。
その頃は1年ほどマグネシウムリボンの公演をしていなかったこともあり、時間もあった。
翌年から初めてマグネシウムリボンの美術をお願いすることになり、以来9年間お世話になってきた。
自分にとっては、松本さん以前の舞台美術は学生演劇の延長で、舞台監督に負うところが大きかった。
公演ごとに出来は良かったり悪かったりで、安定していなかった。
松本さんと関わるようになってから、公演ごとに数度のブレインストーミングがあり、自分にとっての舞台美術観を育てる時間になっていた。
9年あれば色々な思い出もあるが、今日の飲みでは過去の思い出を語るより、これからどう生きていくかという未来の話が多かった。
松本さんが東京を出ることを考えて1年と少し、王子をやめてから半年、すでに過去については考え尽くして来たのかもしれない。