夏の終わりの海

土曜日にしては珍しく朝の8時に起き、小田急江ノ島線?江ノ電経由で鎌倉に行った。
8月最後の日、すなわち海水浴場の千秋楽に海水浴をしようという腹積もりだ。

小田急線の車中ではメークをするギャル二人組の真向かいに座った。
こいつらのパンツが見えそうなので時間帯的に非常に困った。
目を背け続けないといけないのだ。

藤沢で江ノ電に乗り換え。パンツ見せ車中メイクギャルは片瀬江ノ島にでも行くのか、そのまま小田急に乗り続けた。
鎌倉から長谷方面に向かう時に乗ったことはあったが、藤沢から江ノ電に乗るのは今回が初めてだった。
江ノ島駅を過ぎたあたりで市電の風情となり、車道を走るかの如く商店街を走り抜けていく。
筒井康隆の「夢の木坂分岐点」で、空腹の男が市電に乗って商店街を往くシーンがある。それを思い出した。

関係ないが「夢の木坂分岐点」はこれまでの人生で出会った本の中で、ぶっちぎり殿堂入り別格第1位の作品である。

源義経でおなじみの腰越をゆるゆると走る。
平家を倒した後後白河法皇の饗応を受け、束の間の泰平を味わっていた義経が兄頼朝の不興を買い、誤解を解くべく鎌倉に赴くが、腰越で沙汰待ちとなる。
この土地で鎌倉にいる兄にあてて書いたのが有名な腰越状だったっけ。
手元に資料がないが、たぶんそうだったと思う。

鎌倉に着いたのは10時40分頃。
すぐにカレー屋「キャラウェイ」へ。
ここはうまくて量が多いので有名な店で、地元の人と観光客とで常に行列が出来る店なのだ。

店は11時半開店だったので、30分ほど小町通で時間をつぶす。
鎌倉名物の人力車をひくあんちゃんが、営業トークで観光客の足を止めていた。
「どこから来たの? 縦っすか? 横須賀?」
思わず足を止めて振り返ってしまうトホホぶりであった。

11時20分にキャラウェイへ。営業時間より早かったが入れてくれた。
ビーフカレーを食う。
ライスが400グラムはある。
ソースはデミグラスソースのように濃厚で、決して辛くはない。
が、うまい。量も多い。値段も730円と安い。
すっかり満足。

昼過ぎに由比ヶ浜へ。
遊泳期間最終日のはずだが、今週中ずっと続いていた厳しい残暑に誘われてか、思ったよりも人出は多かった。
別に去りゆく夏を惜しむために海に来たわけではないので、盛夏と見まごうばかりの風景はむしろ喜ばしかった。

8月31日にしては上出来な混みようだ

あとはひたすら泳いだ。
漱石の「こころ」冒頭、「先生」との出会いは鎌倉の海だった。
そんな文学的感興を木っ端微塵にぶちこわすのは、台風16号の影響による波の高さだった。
ざっぱんざっぱん、である。

しかしおかげでクラゲも出ず、沖に行けないのは残念だったが、疲れるまで泳ぎ、ひりひりするまで体を焼いた。
やはり海はいい。
談志さんは「浜辺に置いといてくれりゃ、あとは勝手にやる」と言っていた。
俺もそうだ。

夕方、小町通に寄ってから帰る。
泳いで焼いて、これ以上何が要る?

夜は十日市場の「大桜」でラーメンを食った。
家系横浜ラーメンである。
二人の女子バイトが、とても可愛かった。

9時過ぎ、泥のように眠る。