仁義なき戦い

 朝、火山灰のように花粉が舞っていた。
 おそらくこの春一番の飛散量だったろう。
 真夏、真冬という言葉があるが、その言い方にならえばそろそろ真春になる。
 一昨日からすこし薄着にした。

 昼、突然雨が降ったのには驚いた。
 降水確率10%だったはずだが、その10%が的中するとはどういうことか。
 運悪く傘を持たずに図書館にいたので、少し濡れてしまった。

 脚本家笠原和夫の本を読んだ。
 『仁義なき戦い』のシナリオを書いた人だ。
 脚本を書く時、いきなりプロットを書くのはいけないそうだ。
 まず資料集め。
 プロットはその後。

 『二百三高地』のシナリオ執筆で作ったノートやメモの写真が載っており、その詳細なことに驚いた。
 日露戦争の年表と、登場人物表が実に細かかった。

 笠原和夫は『仁義なき戦い』という名作の他に、マッチと明菜が共演した『愛・旅立ち』というトホホ映画も書いている。
 確か、二人の仲が週刊誌に書かれて間もない頃の映画で、結構ヒットしたのだけど、のちにテレビで放映したものを見て、当時でさえ脱力してしまった。
 職業的脚本家は、何でも書くから、そういうこともあるのだろう。

 夜、その『仁義なき戦い』を見た。
 一番かっこいい頃の管原文太を堪能する。
 倉本想の著書に書いてあったが、かつて勝新太郎と一緒にヤクザの宴会に参加した時、どの役者が本物のヤクザに最も近いかということを、ヤクザ達が話しているのを聞いたという。
 「文太は格好良すぎるわ。あんなヤクザおらん」
 「松方はどうや?」
 「そや!松方がおった!」
 「松方や!」
 松方弘樹がもっとも本物のヤクザに近い感じだったという。

 いずれにせよ、どの役者も声がいい。
 低い声が自然に出ている。

 『断末魔の轟木氏』の台本を書き直している。
 再読してみて、余計な台詞や言葉があまりにも多いことに耐えられなくなった。
 全部削るだけでも10分くらい時間が短くなるのではないか?
 5年前の本でそうなのだから、それ以前のものときたらもっと色々なことが気になるはずだ。
 たぶん、去年書いたものもそうだろう。
 いつまで経っても上手くならん。
 焦る。