時間をさかのぼるにつれピュアに

8時起き。
納豆とご飯だけの簡単な朝飯を食べる。
外は曇り。

サラ・ウォーターズ『夜の谺』読了。
時代をさかのぼる叙述方法が、大変効果的な作品だった。

物語は、1947年、1944年、1941年と、時代をさかのぼる。
小さい謎が、時間をさかのぼることで解きほぐされていく。
謎自体は大したものではない。
彼はなぜ刑務所に入ったのか?
彼女は何処で彼と会ったのか?
その程度だ。

だが、1947年の時点では終わる寸前の関係が、1944年ではまだ熱く、1941年では瑞々しい。
読者は、行く末を知っているがゆえに、1941年の描写に胸を打たれる。

1944年のエピソードで、中絶をする女の子の話がある。
当時は堕胎が違法だから、妊娠がわかった時の女の子の絶望は、今とは比較にならないほど深い。
相手の男の反応も、ある意味予想通りだ。
彼女の体を心配しながらも<気をつけなかった>ことで暗に彼女を責めている。
しかもそいつは妻帯者。子供が二人いる。
(別れちまえよ)
と思ったが、それは平和な時代に生きる人間の意見かも知れない。

だが、堕胎までしたのに、その男と別れたくないという情熱は、戦後の1947年には当然色あせる。
そして、1941年の出会いには、ドキドキする。

新訳版の『カラマーゾフの兄弟』読み始める。
カラマーゾフのお父ちゃんの台詞から、村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』の牛河を連想する。
一言余計なあたりが似ている。
末っ子のアリョーシャからは、『白痴』のムイシュキン公爵を連想する。

夕方、『ドッペルゲンガーの森』に出演してくれた吉田さんの芝居に行こうと思ったが、開演時間に間に合いそうになく断念する。
8時近くに帰宅。
豚肉の薄切り、きのこ、ネギ、つまみ菜などで、しゃぶしゃぶを食う。