昼過ぎ起き。
シャワーを浴び、どのタイミングで入場すべきか考える。
開場は3時で開演は5時。
3時に着いてもやることはないし、物販に興味はない。
家で待つのも芸がない。
結局2時に家を出て、荻窪の「二葉」でつけ麺を食べる。
3時過ぎにドーム到着。
荷物チェックの列に挙動不審のリュック男がおり、1分間に左右を200回くらい代わる代わる確認していた。
いったん席についてから荷物を置いて売店をめぐる。
物販に興味はなかったが、人が続々と集まってくるのを見ていると興奮が高まった。
高まりに落とし前をつけるためにパンフレットを購入し、気持ちを静めるためにバーで生ビールを頼む。
通路の壁際に寄りかかり、ビールを飲み、パンフレットを一通り読む。
4時過ぎに席へ。
時間つぶしに30分ほど『ねじまき鳥クロニクル』を読む。
やがて隣の席に人が座ったので本をしまう。
ステージを眺め、ドームの空気を吸い込み、開演を待つ。
席はアリーナC。
右隣にのっちコスプレの女性。
左隣に素朴系純正ファンの男性。
前にややオタっぽい男性。
後ろは通路だった。
5時近くになると、ステージ上の照明が変化する度にスタンドから大歓声が聞こえた。
アリーナ席も埋まってきた。
自分の周りに空席はなく、見上げた印象ではスタンド席もぎっちぎちに埋まっていた。
5時ちょっと過ぎに開演。
3方向の花道を白い衣装の3人が歩いてきて、舞台中央の白いテントの中に入っていく。
意外や一曲目は「シークレット・シークレット」だった。
イントロが流れる。
大歓声。
そこから「不自然なガール」「GAME」「ワンルーム・ディスコ」と、重爆撃機クラスの攻撃が続く。
特に「GAME」は圧巻だった。
MCの客いじりは、以前よりも喋りがコンパクトにまとまり、冗長さが解消されていた。
「575」は生歌だった。
鼻歌のような歌い方で上手く聴かせるのは難しい。
上手く歌う歌い方で聴かせたら曲がダメになってしまう。
「Perfumeの掟」のパフォーマンスはあまりよく見えなかった。
だが(もっとよく見たい)と思うパフォーマンスは、のちにDVD化されてから確認できる。
今はその場にいるということを最大限に味わった方がいい。
目の前に地蔵さんがいた。
よく見ると彼なりに小さく揺れて、そっと深く、何かを慈しむように楽しんでいた。
いいじゃないか、と思った。
「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」だからって、指の形を作らなくてもいいじゃないか。
もちろん作りたければ思う存分に作ればいいじゃないか。
「エレクトロ・ワールド」や「ジェニーはご機嫌ななめ」は、コールするのが楽しいので一緒にするしかない。
あとは、自分なりに楽しむ。
「Puppy love」と「wonder2」でライブは終了。
アンコールで3人は「ねぇ」の衣装を着て出てきた。
隣のコスプレ姉さんが衣装の可愛さに、
「はあっ…」
と吐息を漏らしていた。
客席全体を見渡すと、女性はおよそ3割から4割弱くらいだった。
彼女らをここへ連れてきたのは、かわいいものに対する嗅覚だったと思う。
アンコール前の挨拶であ~ちゃんは号泣。
定番の光景だ。
歌が始まる前に3人で、涙でメークが崩れていないか確認するのが面白い。
「ねぇ」はステップが実に格好良かった。
最後の曲は「ポリリズム」だった。納得。
花火があがり、銀色のテープが空から降ってきた。
テープをつかみ取り、それを振った。
アリーナ席のみんながそうしていた。
終わってから曲を数えてみたが、20曲以上はやっていた。
「マカロニ」や「セラミックガール」や「The best thing」など、やらなかった曲は沢山あった。
むしろそれ故に、自在にセットリストが組める、楽曲の充実振りがよくわかった。
5万人ぎっしり入ったのだけど、商売の匂いが奇妙なほどしてこなかった。
チケット代6500円かける5万で、売上は3億2500万だ。
物販の上乗せ分があるとしても、かかる費用を考えれば、おいしい商売になっているとは思えない。
テレビ番組にゲスト出演したり、CMに出た方が、お金は儲かるだろうと思う。
アリーナからスタンドまで、ここまでぎっしり観客が詰まった状態を見るのは初めてだが、それほどまでチケットが売れたにも関わらず、大々的な宣伝はされてこなかったと思う。
もちろんニュースにはなったが、費用対効果を考えると、宣伝は驚くほど少なかったと思う。
むしろ、宣伝とは関係のないところでお客さんが来ていた。
なぜなんだろう?
(あのPerfumeがドームでやるんだから、これは応援しなくちゃ)
古くからのファンほど思いは強いだろう。
だがライブを見ていて気づいた。
応援するつもりで来たのに、なんだか応援されているようだ。
その源は一体どこにあるのだろう?
Perfumeの3人だけが作り出しているわけではない。
「多幸感」あふれる楽曲だけが作り出しているわけでもない。
不思議な力だ。
5万人のうち何人かは、その不思議な力に導かれていたような気がする。
9時過ぎ帰宅。
とてもいい気分だった。
選曲、演出、客席の位置、音響、もろもろのことに対して、こうして欲しかったという意見を言うことはできるのだけど、それを言うことにまるで意味を見いだせなくなるほど、いい気分だった。