普通に演じることで出る個性

11時起き。
着替えてメールチェックをし、今日の予定を調べる。
優都子ちゃんの出演する舞台を昼に見に行くつもりでいたが、予約したのは夜だった。
あやうく間違えて出かけるところだった。

ガスファンヒーターを出し、動作を確かめる。
部屋があっという間に暖かくなった。

夕方4時半に出かける。
昨日松本さんと話した店で、ダウンのコートを忘れてしまった。
それを先に取りに行くか、芝居を観てからにするか迷う。
雨が降っていたので、荷物が増えるよりはと思い、終演後に寄ることに決めた。

5時過ぎに恵比寿へ。
早く着きすぎた。
「香月」本店へ行き、ラーメン食べる。
昔は西口にあったが、東口に移転したのだ。
知らなかった。
店は客が一人しかいなかった。
かつての行列店にしては寂しい。

食べ終わり、時間をつぶすためにサンマルクカフェへ。
本を読もうと思って入ったが、どういうわけか集中できず、スマホの画面を見ていた。

6時半にエコー劇場へ。
客入れの音楽が、80年代初頭の歌謡曲だった。
松山千春の「長い夜」を久しぶりに聞いた。
レコードが実家にある。

大人数が出る芝居で、スジは何となくわかったが、人物の見分けがつきづらかった。
優都子ちゃんは、普通の社会人を演じていた。
いつも何かのキャラを演じることの多い彼女だが、それが呪縛となっていることは、客演の舞台を見る度に感じていた。
今回、類型的なキャラクターに収まらない普通の女性を演じることで、彼女が本来持っている特徴が際だっていたと思う。

ずいぶん前、とあるオーディションを受けた時の話。
台本を渡され、セリフを読んだ時、審査員の先生から言われた。
「面白い人をやろうとしなくていいから、普通にやって」
普通にやってと言われて、逆に、どうすればいいのかわからなくなってしまい、読みはグダグダになってしまった。

でも、その先生の言ったことは正しかったのだと、今にして思う。
二十代前半の自分は、自分以外の何かを演じることに熱心で、普通にやるということがわからなかった。
普通にやろうとすると、どういうことが起きるか?
それは、自分自身との直面だ。
「普通にしようとすると、おれ、こんなにボソボソ喋るんだ」
という発見だ。
そこから、自分以外の別の誰かになっていく。

終演後、優都子ちゃんに挨拶。
「芝居が長引いてごめんなさい!」
と謝られる。

雨はやんでいた。
駅に向かう途中、コンビニの前で「塚本さん」と声をかけられる。
トツゲキ倶楽部で共演した久保さんだった。
煙草を吸っていた。

「どうしたんです?」
「優都子ちゃんの芝居見て、終わって速攻煙草すおうと思ったら切らしてたんで、買いに来たんです」
「挨拶は?」
「してないです」
「してきなさいよ」
「あはは」

久保さんと別れ、渋谷へひと駅移動。
昨日の店に行き、ダウンジャケットを受け取る。
手に持つとけっこうかさばった。

新宿駅のラッシュを想像してげんなりしたので、井の頭線を使って吉祥寺回りで帰る。

『虞美人草』読む。
真面目になるということについての、宗近くんのセリフが、心に突き刺さった。

11時前帰宅。