孤独だからこそ寂しくない

「マツコの知らない世界」をまた見る。
どうして面白いんだろう?
素人さんに対して、見下した感じがない。
築地で美味しいものを食べるコーナーで、働いている人への気の使い方がまっとう。
以前、チーズの回で、ビールを乾杯しているところは、とても和んだ。
こちらはプロであんたは素人みたいな上から目線を感じない。
へりくだってもいないし、図々しくもない。
素人に優しいというレベルではなく、ごく普通に対峙している感じがいいのだろうか。

2004年のドラマ『砂の器』見る。
放送当時はまったくスルーしていた。
原田芳雄作品を追いかけていなかったら見ることもなかったろう。
スタッフロールを見ると、山田洋次の名前。
松竹の撮影チームが協力しているのかもしれない。
原田芳雄演じる本浦千代吉が、息子と放浪するシーンは、民放の連続テレビドラマでは考えられないほどロケーションが多用されている。
台詞はなく、音楽だけが流れているのだが、映像が美しかった。
見た瞬間、ああ、ちゃんとしてる映像だと思った。
最終回、駅のホームで息子と別れる場面。
警察に出頭する父が、息子に笑顔を見せて汽車に乗る。
原田芳雄の演技に、涙腺は崩壊。
号泣を通り越し、慟哭ものだった。
主人公は中居くんで、白皙の美青年という感じ。
こんなにいい芝居をしてたのかとびっくりした。

今年のマグネシウムリボン公演日程が決まった。
10月14日から18日まで。
劇場はd-倉庫。

孤独についての芝居を書きたい。
知り合いに、奢ってまで毎日飲みにいく人がいる。
相手はいつも同じ人で、周囲からはたかっていると思われている。
たとえたかられているとしても、飲みに行きたい、話がしたい、友達でいたいという気持ちは、わからなくもない。
たかっている方だって、友達という仕事をしているようなものだ。

「孤独もいいもんですよ」
映画監督の新藤兼人が、NHKの番組に出演した時に言っていた。
当時、95歳くらいだったと思う。

人間、死ぬときは一人だ。
つまり、寝るときも一人だ。
孤独を埋めようとしても限度がある。

だからといって、社会において孤立するのが良いというのではない。
孤立と孤独は違う。
あと、「寂しさ」と「孤独」も、似て非なるものだ。

生きていく過程で、育んでいかなければならない孤独とはどんなものか。
孤独だからこそ、寂しくないという考え。
そういう芝居を書こうと思っている。