トレイルランのように

6時に起きた。今日は朝のうちに西表島へ渡る予定を立てていたので、朝飯は食べず、7時に宿を出た。

港のパーキングに車を止め、ファミリーマートでサンドイッチとコーヒーを買い、乗船ターミナルで食べた。

船を待っている間、『カラマーゾフの兄弟』中巻を読んだ。

8時半の船に乗り、西表島へ向かった。船はけっこう揺れて、波をジャンプするように走っていた。空中に浮かんで落下する時の浮遊感を何度も感じたが、船酔いはしなかった。

9時過ぎ、大原港に到着。レンタカー会社の人を探す。看板を持って立っていたので声をかける。
車を止めてあるところに案内され、簡単な説明を受けた。お金を渡し、浦内川の河口を目指した。

西表島の道は島の東側に弧を描くようにしてある一本道で、行って帰ってくるだけになっている。道なりに北へ走る。制限速度は40キロとのことだった。

10時20分過ぎに浦内川の河口に着いた。遊覧船のチケットを買い、出船時間を待つ。

観光客はいなかった。途中、日本人女性と外国人男性のカップルが来て、カヌーを借りていた。時間ギリギリになってから日本人カップルが来て、乗船客は3人となった。

操縦者兼ガイドさんの案内を聞きながら川をさかのぼる。マングローブとは植物の名前ではなく、汽水域で育つ木の総称とのこと。さっきカヌーを借りていたカップルは、二人乗りカヌーで川をさかのぼっていた。カヌーを借りるのも良かったかもしれない。

8キロほど川をさかのぼり、船着き場に着いた。そこで下り、マリユドゥの滝までトレッキングをすることにした。カップルはそのまま船で下るらしかった。

滝までは一本道だったので迷うことはなかった。所々ぬかるんでいたが、特にキツイとは感じなかった。峠走の方がきついと思った。もしかして峠走の経験が生きて、楽に歩けているのかもしれないと思った。

マリユドゥの滝までは徒歩で1時間かかるとのことだったが、30分で着くことができた。滝は展望台から遠くを見ることしかできなかったので迫力は感じなかった。

次に、カンビレーの滝を目指した。マリユドゥの滝から徒歩で30分とのことだったが、ここも15分とかからなかった。

カンビレーの滝は、落差は大したことはなかったが、滝の間近に近づくことができた。岩に座って休むこともできそうで、何人かの観光客が休んでいた。

戻りの遊覧船は、到着して2時間後にやってくる予定だった。カンビレーの滝まで歩いて帰ってくる時間を2時間に見積もっているようだった。しかし、自分が乗る前の便の客に滝で追いついたのだし、早く戻れば一つ前の船で戻れるかもしれないと考えた。
それで、来る時よりもペースを上げて、船着き場までの道を戻った。途中、家族連れと熟女三人組を追い抜いた。足元がわりと安定しているところは走りさえした。汗がたっぷり流れたが、トレイルランのようなものだと思い、気にしなかった。

船着き場に着いたが、船はすでに出て行った後だった。さすがに間に合わなかったようだ。予定されていた帰り便まで、余計に時間が余ってしまった。スマホの電波はもちろん圏外だった。ポーチに文庫本を入れておけば良かったと思った。

日陰を見つけて座り、川を眺めた。魚が泳いでいた。写真を撮った。

追い抜いた家族連れと熟女組がやってきた。彼らは、自分の前の船でやってきたので、本当はもう帰り便に乗っているはずだった。ゆっくり歩き、滝でたっぷり休んだのだろう。

船がやってきた。操縦者はさっきと同じ人だったが、熟女の一人が「あれ? 違う人だ」と言った。

川を下って船着き場に向かう。ちょうど干潮時で、来る時より川幅が狭くなっており、川の中心に砂州が現れているところもあった。満潮時の方が広い川幅の迫力を味わえると、操縦者兼ガイド氏が言った。説明の上手い人だった。

船着き場に着いてから、喉の渇きを覚えた。水補給なしでトレッキングをしてきたのだ。しかもラン気味に。

車に戻り、星砂海岸を目指した。カーナビがないのでGoogleマップであたりをつけた。一本道なので標識に注意していれば良かった。

海岸入り口の駐車場で車を止め、近くの自販機でチャージ系の飲み物を買った。なんと、全然冷えていなかった。

星砂海岸に下りると、潮は干潮から上げ潮になって間もない頃合いだった。潮が引きすぎてシュノーケリングや遊泳はとても無理そうだった。観光客はビーチ全体で十数人くらいしかいなかった。
それでも、海や砂の色はきれいで、景色として眺めているだけでも心が和んだ。ただ、暑いのに日陰がないため、長居できなかった。

車に戻ると2時を過ぎていた。Googleマップで、西表島にある飲食店を検索したが、その時間だとどこも営業時間外だった。とりあえず、近くにあったカフェを目指してみたが、営業していなかった。

結局、道を南へ下り、大原港へ戻った。途中、激しいスコールがあった。
西表島はやはり大きく、時刻は3時半になっていた。食事をどこかでしていたらもっと遅くなっていた。

車は港のパーキングに置きっぱなしにしておけばいいと言われたので、ガソリンを入れてからそうした。港の土産物屋に入ってみたが、食べ物は売っていなかった。
県道から少し入ったところにスーパーがあったので行ってみた。ごく普通のスーパーだった。そこで、ピザのパンとコーラを買った。

発着所の椅子に座りパンを食べた。次の石垣島行きは5時だった。それまで本を読み、スマホを見たりして過ごした。

5時40分頃に石垣島へ戻る。石垣島は雨が降らなかったようで、道はどこも乾いていた。

車で、行っていなかった島の南東部を走らせる。その辺りは、県道に沿って、AEONだとか西松屋だとか、大きい店舗が建っていた。マクドナルドもあった。
海側に行くと、護岸工事がされており、釣りをしている人がいた。ビーチもあった。そのすぐそばに小学校もあった。こういうところで小学生時代を過ごしたかったなと、無い物ねだりみたいなことを思った。

唐人の墓あたりを回って、ファミリーマートで車を止めた。7時20分だった。まだ明るかった。島の地理的な問題で、本来30分以上の時差があってもいいわけだ。

8時過ぎに宿へ。すぐシャワーを浴び、ファミマで買ってきたサワーを飲んだ。結局、今日は夕食を食べなかったが、特に腹は空いていなかった。

台風が発生したらしい。石垣島には明日上陸するとのことだった。関東は梅雨が明け、今日は良い天気だったらしい。梅雨から逃げ、夏を捕まえにやって来て、台風に追いかけられ、夏に戻っていくわけだ。

1時過ぎ、腹が減り始めていたので、明日の朝飯を楽しみにしながら就寝。