嫌な感じに蒸し暑い日

5時前起き。
お菓子の練習をする。全体のパーツをやっとさらえた。それらを一つにまとめる作業はまだこれからだ。

6時、朝飯にご飯、納豆、鮭。
従兄のうわさ話する。伯母が亡くなり、今は中野区で暮らしている。
「かわいそうねえ」と母がいうので、「そんなことはない」と答えた。
従兄は、『海辺のカフカ』に出てきたナカタさんを思わせるところがある人だ。そのことを言い、カフカのストーリーを説明すると、母は「読みたい」と言った。しかし、オレが持っているのは文庫本だし、字が小さくて読めないだろう。大型活字本として売ってるだろうか。

7時半に実家を出る。蒸し暑かった。この夏一番の蒸し暑さだと思った。先週までの暑さはカラッとしていた。「バカヤロウ!」と怒鳴ってパンチ一発くらわすけど、練習が終わったらゲラゲラ笑って町中華誘ってくれる先輩みたいにカラッとしていた。それが今朝は。
「この前オレが注意したのに、同じミス、まーたしてるよな? あ? まーーーーた、してるよな?」
とか言いながら無表情で近づいて来て、
「わざとミスしてない? なあ? なあ? なあ?」
と、「なあ」を何十回も繰り返しながら指でこちらの鳩尾とかを突っついてきて、
「何だその目? オレ別にお前のこといじめてねえから。殴ってもねえし。ミスしたのお前なのみんな見てるし。チクったって、監督もキャプテンもマネージャーも、誰もお前の言うこと真剣に聞いてくれねえから」
と、どよーんとした目で言いながら歩み去っていく先輩みたいな暑さだった。

こういう先輩、小劇場の演出に多い気がする。
「何回同じこと言わせるんだよ。俺もう疲れたよ。頑張りますって、今まで頑張ってなかったの?」
みたいな、ね。

昨日の夕方、駅に向かう途中、広場にスケボーを練習している小一くらいの女の子とお母さんがいたのだが、そろそろ帰ろうかと聞くお母さんに、「もう少し練習して弱点を克服したい」と、その娘さんは言っておられた。
「弱点を克服したい」などというセリフをオレが人生で初めて用いたのは高校生くらいからだ。小一の頃なんて、おれの存在そのものが人類の弱点だった。昨日の女の子、もし小一の頃のオレが出会ったら速攻で恋していただろうが、絶対だめ。禁止。小一の頃のオレなんか、人よりも堆肥に近い存在だ。せめて、良き土になってやることくらいしかできまい。「フルーツ植えていいよ。でも栗はやめてね。落ちると痛そう」

昼、フライドチキン、カップヌードル味噌。

夕方、神田へ。途中まで自転車を使い、そこから電車で行こうと思ったが、神保町あたりまで走ったら、そのまま神田まで行った方が早いと気づいた。6時10分過ぎ神田到着。

古い治療痕のかぶせものを外し、治療をしてもらった。かぶせ物をとる時の金属音が脳天に響き、頭が痛くなった。
治療後、これからどうするかと、『クロノトリガー』のルッカみたいな先生に問われた。せっかくかぶせ物を外したのだから、奥の方まで調べてせっせと治療することを勧められたが、治療には二ヶ月くらいかかるとのこと。また、奥の方については特に今の段階で問題があるわけではなく、やってみないとわからないとのこと。
先生が強く勧めるなら「お願いします」と答えられただろうが、こちらの判断に任せる風だったので、緊急ではなかろうと判断した。その治療をすることでかぶせ物なしの期間が長引くと、生活の快適さも低下する。調査はパスし、今回は新しくかぶせ物を作って終えることにした。どのみちあと2回は来院しなくてはいけない。

かぶせ物にセラミックを使ったらいくらかかるかと思い、会計の時にレジ娘に聞くと、先ほどの担当先生がやってきて色々説明をしてくれた。いい先生なのだが話が長い。あと、治療中こちらは大きく口をあけていて喋れないのに「大丈夫ですか?」と聞いてくるのにも困った。「あああ、あああ」と、『海のトリトン』の兄さんみたいになってしまった。

靖国通りから青梅街道というコースで帰宅。市ヶ谷から外堀通りに合流し、防衛省の前から富久町に至るルートを走るのは、記憶にないくらい久しぶりだった。

サミットで買い物。何を食べたいのかわからなくなっており、ポテトチップス、マンゴータルト、コーヒー、グレープフルーツジュース、種なし葡萄を買った。

ヘアサロンの予約が明後日に迫っており、そういえば前回『鬼滅の刃』をきちんと読み直してくると約束したことを思い出し、夏休みの課題図書として1巻から5巻途中まで読み返した。胡蝶しのぶが登場したが、まだこの段階では大丈夫だった。
炭治郎は、小中学生の男子読者に対して、炭治郎君みたいにモテる男の子になりなさい、と成長バイアスをかける女子視点の教育的効果が高いキャラクターだと思った。『ただしイケメンに限る』縛りも相当強いはず。炭治郎、美形だものな。小六くらいのオレが読者だったとしても、ヘルメット頭の小太りアホ面ハンバーグバカだったから、真似しようにもできなかったろう。
そういうガキのために善逸がいるのかもしれない。弱さをアピールするために豊かな言葉が奔流のごとくほとばしるさまが大変よい。弱音もここまで吐ききれば『歌』に近い。ボーカリストだ。

11時半就寝。