5時半起き。
トマトの水をバケツ一杯分補給した。あと一杯入れるとあふれると思った。昨日は蒸し暑かったが、曇りがちだったため、水が減らなかったようだ。
8時に家を出てフジロックに向かう。地下鉄で上野へ。途中、間違えて上野広小路で降りてしまった。乗り換え先を見て、おかしいと思い、「あれ? ここ、上野じゃないじゃん、しまった、戻…」のタイミングでドアがしまった。トンネルに消えていく銀座線に向かって、中指やいろんなとこを立てた。
上野の売店でサンドイッチとコーヒーを買い、9時半過ぎの上越新幹線に乗る。10時47分に越後湯沢へ。
駅前のレストラン『ゆざわ』でカツカレーのセットを頼む。大盛りにした。常連の女性客が来て、店員の女の子にお土産を渡していた。
「これ、みんなで(食べて)」
「ありがとうございます。生ですか?」
「うん。忙しい?」
「空いてます」
「そうよね。去年なんか今くらいの時間、行列できてたもんね」
という会話が聞こえた。
駅構内の『ぽんしゅ館』で利き酒をする。500円でおちょこに最大5杯分の利き酒ができるコーナーだった。
シャトルバスに乗り苗場に向かう。駅から40分ほどかかった。越後湯沢駅は晴れていたが、山に登ると空の領域が山によって狭められ、東西南北すべて青空ということはなくなり、どこかのブロックには必ず雨降らす気満々の雲が立ち込めていた。
リストバンド交換所まで歩く途中、駐車スペースがあり、キャンピングカーで来ている人々がテーブルを出して雑談をしていた。
会場に入り、アプリの地図を見ながら移動する。とにかくまず音を体に浴びたかった。
ROOKIE A GO-GOでSTAP Sigh Boys を見た。椅子席に座った。先日のPerfumeと同様、客は歓声を上げることはできず、拍手のみをしていた。
STAP Sigh Boysはアイルランドの人らしく、口ひげをつけ、フランク・ザッパっぽい曲をやっていた。『ザッパっぽい』という言葉の響きは何かに似ているなと思ったが、何に似ているかは思い出せなかった。
タイムテーブルを見て、次はBEGINを見ようと決めた。それまで1時間以上時間があったので、ステージをチェックしながらゆっくり会場端まで歩いた。途中、雨が降ってきたので、レインスーツの上だけを着た。雨は15分ほどでやんだ。
一人で来ている人が多かった。それらの人々は元から一人で来ているのか、今年だからなのかはわからなかった。おそらくアルコール禁止ゆえに来るのをやめた集団は相当いると思われ、普段の年はそういう人々に紛れて一人客は目立たなくなっているのかもしれない。
タイ焼きそばを食べ、お茶を呑んでひと休みした。ハンモックを設置してある林を抜けようとした時に、強めの雨が降ってきたので、またレインスーツの上を着た。今度のは上だけではもたなかった。下も履こうか迷ったが、木陰で雨宿りをしていると雨の勢いはまた収まった。
FIELD OF HEAVENにて3時20分からBEGINのステージを見る。後ろのスペースに椅子を置いて座って見た。初めは座ったまま体をゆらしていたのだが、後半、いい気分になってきたので椅子をしまって前の方に行き体を揺らした。なぜか知らないが涙が出てきた。こういうのがずっと足りていなかったのだ。いくら配信で見てもそれは耳だけの話で、体はずっと音の不足に耐えてきたのだ。そして大音量を空気の震えで受け止めた耳以外の細胞が、感謝の反応を示して、それが涙の形になって表れたのだ。
今日、一人で来ている客は、たぶんみんなそういう事情で来ているのだろう。フェスに限らず、ライブ文化を守るという大儀は重要だが、定期的にそういう場に身を投じないと日常がやっていけないという人はいる。というより、そういう場で細胞を震わせることで、日常によって全身にこびりついた煤のごときものをふるい落としたり、あるいは単に歓喜を味わったり、ストレスとやらを解消したと思いこむ必要がある人はいて、そういう人達は、一人でもそこへ行く。
続いてGREEN STAGEへ移動し、MISIAを見た。いきなり国家斉唱から始まったのには驚いたが、違和感は感じなかった。芝生に椅子を置き、座って見た。途中、雨が降ってきたので、上も下もレインスーツを着た。
時と場所の特異性によるものか、ライブだからという理由によるものか、演奏の重低音とMISIAのスーパーボーカルが空気を震わせ、その波動が体の芯に届くと、官能的な反応を呼び起こされているような気がした。
沢山のトンボがその辺を飛び回り、いつの間にか帽子に止まったりしていた。指を立てるとそこに止まるものもいた。
夜は立ちっぱなしになるので、色々食べてエネルギー補給をした。ドネルケバブサンド、アユの塩焼き、ハラミ丼を食べた。アユの塩焼きを買った直後、今までとは比べものにならないほど強い勢いで雨が降ってきたが、MISIAのライブ中からレインスーツをずっと着ていたので慌てずに済んだ。
GREEN STAGE に戻り、忌野清志郎 Rock’n’Roll FOREVERを見る。ステージ下手側のかなり前の方に陣取った。
仲井戸麗市のバンドを基本に、ゲストが入れ替わり一曲ずつ歌っていくスタイルだった。アーチストごとに出来は様々たった。GLIM SPANKY『僕の好きな先生』トータス松本『JUMP』UA『トランジスタラジオ』奥田民生『スローバラード』が良かった。UAは強烈にかわいくて、最初誰だかわからなかった。トータス松本は声量があって圧があったし、奥田民生はのそっと出てくる感じがあまりにも気負いがなくて笑えた。甲本ヒロトが『キモチE』を歌ったが、思い切り「そうさおいらは」の入りを間違えてしまい、チャボさんに「もう一回」のジェスチャーをもらっていた。ラストは出演者全員が出てきて『上を向いて歩こう』を歌った。え? あの曲じゃないの? と、おそらく誰もが思っただろうが、演奏が終わって出演者が引っ込んだ後、忌野清志郎があの曲を歌う映像が流れたので納得した。
次の電気グルーヴまで1時間と少しあったが、通路前のいい位置を保持していたので動きたくなかった。足が痛かったので、携帯椅子を置いて座って休んだら、係の人にそこは椅子禁止ゾーンなので使わぬよう注意された。で、レインスーツを着ていたので、直座りして足を休めた。
9時40分、電気グルーヴ登場。
生で見るのは2016年のZepp Tokyo以来。
2017年はチケット入手したものの事情で行けず、2018年はチケット取れず、2019年はチケット入手したものの瀧が悪いために行けず、2020年のフジロックはチケット入手したものの中止となり、5年ぶり、宿願のライブ参加となった。
さすがというか、容赦ないというか、始まってからは一切オーディエンスを待たせず、常にノリっぱなしにさせる構成だった。感慨を抱く余裕など一切与えてくれなかった。次から次に曲がかかり、常に音があって、体はそれに反応し続けた。『N.O.』がかかった時にやっと、これで終わるんだなと思った。
終わってから、観客は、もしかしたらちょっとだけまた出てきてくれないかと思って拍手を続けたが、司会の声で「電気グルーヴでした」と聞こえたので諦めた。11時になっていた。
シャトルバスに向かって歩いた。左足に豆が出来ているようで、歩くのが辛かった。レインスーツを脱ぎたかったが、バス乗り場で並びたくなかったので、一心に歩いた。
並ぶことなくバスに乗れたので、席でレインスーツを脱いだ。眠かった。12時に越後湯沢駅に着いた。駅前の『魚民』に入った。
オムそばと、ピーマンの炒め物を食べて、ビールを飲んだ。席にコンセントがあったのでスマホの充電をした。