ふくと久留米ラーメン

朝5時起き。着替えて荷造りしてチェックアウトする。ホテルのスタンプカードをもらったが、そうそう博多には来ないから、埋めるのは難しそう。

5時45分の地下鉄で博多へ。6時5分の小倉行きに乗る。青春18きっぷ使用。

車内で読書。尾辻克彦『カメラが欲しい』読了。本棚から出したもの。大学時代の終わり頃に買った覚えがある。それ以来の再読。

八幡で下関行きに乗り換え、8時2分下関到着。バスで唐戸市場へ。

市場2階にある『市場食堂よし』へ。しかし、売り切れでもう閉まっていた。営業時間は1時過ぎまでのはずだったが。いずれにせよ、開いてないことは確かだった。

急いで、プランBを考える。とにかくふぐを食べたかった。市場から少し駅に移動したところにある店も事前にチェックしていたが、そこは10時開店だった。2時間近く待たないといけない。待つほどの価値があるかどうかはわからないが、少なくとも『よし』よりは優先度を低めにしていた。

すると、市場内にある別の店が目に入った。『まぐろとかめ』という店だった。そこでも、ふく定食が1600円で提供されていた。一応、店についてスマホで検索すると評判も上々だった。

入ることにした。

ふく定食だけではボリューム的に心許なかったので、天ぷらの小も追加し、ご飯を大盛りにした。隣の席に一人旅の、アラフォーとアラサーの中間っぽく見える女子が座っており、店のおばちゃんに、「いろいろ食べたいので、さっき注文した何々を、これこれに変えて下さい」と頼んでいた。おばちゃんは、いい人で、厨房に確認しながら丁寧に応対していた。

ふく定食は、ふぐの刺身、ふぐの天ぷら、ふぐ汁のセットだった。これに天ぷら小を追加すると、定食としてはちょうどいい量になった。

ふぐの刺身は当然薄切りだが、天ぷらとフグ汁のフグはわりと肉厚で美味しかった。

食べ終わってから、一眼レフを出し、写真を撮りながら駅に移動する。しかし、あるタイミングで巻き上げレバーが動かなくなってしまった。また壊れたのかと思い、暗澹とした気持ちになる。スマホでも写真は撮れるし、実際、カメラの性能としては1980年代初頭の一眼レフよりは上じゃないかと思う。でも、一眼レフで撮れなくなったとたん、撮影意欲がかなり失われてしまった。

海沿いに駅まで歩いた。

海峡ゆめタワーに上ってみた。エレベーターの料金は600円だった。瀬戸内海、関門海峡、対岸の門司港、日本海が見えた。

日本海の右、山口県側には、角島があるはずだった。今日、そこへ行く計画を当初は立てていた。

しかし断念した。理由は、鉄道駅からのアクセスの悪さだ。最寄りの駅は山陰本線の阿川駅になるが、阿川から角島に渡る角島大橋までは5キロ以上あり、歩いて行くのは困難だ。バスもない。
阿川の二つ手前、長門二見駅からはバスが出ている。それに乗って肥中というところまで移動すれば、橋までの距離は3キロと若干近くなる。

しかしこれは、島までの距離ではなく橋までの距離だ。角島大橋自体、2キロほどの長さがあるので、島までの距離はやはり5キロ以上になってしまう。

で、キックボードのことを考えたのだ。キックボードなら、自転車ほどの速度は無理だが、ジョギングするくらいのペースで移動できるのではないか。

しかし、色々あって手に入れることは無理だった。通販詐欺にも引っかかった。で、今回は諦めた。

ひととおり、下関からの眺望を楽しんでから、下に降りた。

駅に隣接したスーパーでホワイトホースのポケット瓶を買った。

10時45分の小倉行きに乗り、小倉で11時16分の久留米行きに乗り換える。ウイスキーをちびちび飲み、アガサ・クリスティ『ゴルフ場殺人事件』読む。

ふと気になって、車内で一眼レフを確認してみた。すると、シャッターが切れるようになっており、巻き上げレバーも直っていた。

博多を過ぎた時、太った若い女の子が隣に座った。むぎゅっ、という感じで、窓際に体が押しつけられた。まあ、でも、臆して座らないよりいい。『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』に出てくる、博士の娘を思い出した。

12時50分過ぎ、久留米到着。

昼飯に久留米ラーメンを食べる予定だったが、美味しい店はJR久留米駅周辺には少なく、西鉄久留米近くにたくさんあった。しかし西鉄久留米までは2キロ以上あったので、路線バスで西鉄久留米へ移動した。

西鉄久留米で降り、道沿いに歩いていると、どこかで見たことのある雰囲気だと思った。道と町並みの感じが、三ノ輪や南千住あたりの明治通りに似ているのだ。

期せずして、久留米のその通りも明治通りというらしかった。しかも少し進むと、昭和通りとの交差点があった。まんま、三ノ輪じゃんと思った。

一眼レフで町の写真を撮ろうとしたが、巻き上げレバーは動いても、フィルムがきちんと送られていない感じがした。先ほど、巻き上げレバーが動かなくなったのも、フィルム装填不良が原因だったのではないか。

住宅地を向け、久留米ラーメンの店『大砲』本店へ。1時20分を少し過ぎていた。有名店で行列店らしく、5人ほど並んでいたが、平日だし、その時間になれば昼飯時に来たお客さんの列は絶えるので、気にせず順番待ちの紙に名前を書いた。

チャーシュー麺とご飯セットを頼んだ。ご飯セットには餃子がついていた。例によってご飯にはチャーシューをのせ、ラーメンスープにカウンターのラー油などを混ぜてタレを作り、カスタムチャーシュー丼にした。

ラーメンの麺は極細ではなくやや細。スープは癖がなく、あっさりしているのかと思いきや、しっかり旨味が溶け込んでいた。

替え玉を「やわ」でした。麺が極細ではないので、「バリカタ」は食べにくいんじゃないかと思ったが、隣席の常連氏らしき青年は「バリで」と、旅行してきたの? みたいなことを言っていた。

食べ終わり、店を出ると、行列は絶えていた。2時近かった。

西鉄久留米駅に向かって歩いた。久留米は観光地というわけではないので、長時間見て回るのはやめにした。

路線バスでJR久留米に戻り、博多に戻った。久留米あたりまでは電車の本数が多いのですぐ博多に戻れるのだが、大分方面に向かったりすると、特急を使わない限り、博多への戻り時間がかなり遅くなってしまう。青春18泣かせのダイヤだと思う。

電車の中で、一眼レフのフィルムを交換する。やはり、きちんと巻き上がっていなかったようだ。フィルムは巻き取りきってしまったので、別のフィルムと区別するため、ケースに入れずに鞄にしまった。

3時過ぎ、博多に戻る。

特に目的はなく、博多駅の博多口と筑紫口をうろうろした。クリスタルキングの「大都会」は、福岡のことを歌ったものだと、何かで読んだ。博多駅周辺の町並みを見ると、大いにあり得ると思う。1970年代当時と今とでは見た目は違うだろうが、規模や人の数においては、大都会と呼ぶにふさわしい。名古屋と比べても遜色ない。

VELOCEでコーヒーを飲み、日記を書く。

4時半過ぎに店を出る。駅の様々な土産物店で色々物色する。明太子、辛子高菜などを買う。博多といえば梅ヶ枝餅という偏見があるのだが、不思議とどこの店にも見かけなかった。

5時20分、そろそろ空港に移動しておこうと思った。コインロッカーでキャリーカートを出し、地下鉄改札に向かう。JRの駅構内に、ギャン泣き幼児がいた。

5時40分過ぎ、福岡空港へ。Peachのチケットだったのだが、チェックイン手続き機がまだ動いていなかったので、あいているベンチに座り、6時10分まで時間をつぶした。

6時10分過ぎ、チェックインを済ませ、荷物預けの列に並ぶ。予約したチケットが、預けなしのものだったので、3000円追加で払ってキャリーカートを預けた。

保安検査を済ませ、登場前に一杯やろうと思ってうろうろしたが、フライドチキンが売り切れていたのでやめにし、売店で缶ビールを買って飲んだ。

気がつくと、7時20分になっていた。7時40分発の飛行機だったので、やべっと思い出発ゲートに向かった。4番だった。

4番の前に行くと、ゲートが閉まっていた。えっ? と思った。確かに、20分前までに搭乗手続きをせよと書いてはいるが、こんなに早く「撤収」という感じでゲートがしまるなんて考えなかった。

保安検査場に戻り、係の人にPeachの担当者に電話をしてもらった。すると、機が遅れたため、出発ゲートが3番に変更になったという。急いで3番ゲートへ走り、受付の女性にチケットを見せると、「機が遅れていまして、まだ受付を開始しておりません」と言われた。見ると、3番周辺にはたくさんの乗客がいた。

7時40分発成田行きだったが、結局、8時10分過ぎまで出発は押した。

機内で『ゴルフ場殺人事件』読了。翻訳が新しかったためか、帰って読みにくかった。

スタンダール『赤と黒』読み始める。本棚にあった本。二十歳の秋に読んだのを覚えているが、内容はまったく覚えていない。再読。
読み始めて、バルザック『谷間の百合』に似ていると感じた。時代背景がほぼ同じで、主人公の出自も、虐げられて育ったというところが似ている。

9時40分成田到着予定だった飛行機は、結局10時10分過ぎに成田に着いた。10時17分の快速東京行きグリーン車に乗ってゆうゆう帰るつもりだったが、終電に間に合うかどうかという話になってしまった。

京成スカイライナーを使えば、地下鉄最寄り駅の終電に間に合うようだった。一方、JRは11時の快速東京行きに乗り、市川で総武線の中野行き最終に乗る選択しかなかった。

スカイライナーに乗る場合、乗車券と特急券が必要になる。しかしJRなら、青春18切符を使える。中野から自宅近くまでは、いつも自転車で通っているコースだ。タクシー代は大してかからない。

ならばJRだなと結論した。グリーン車を我慢すれば、タクシー代の足しになる。

荷物を10時半に引き取り、JRホームに移動する。11時の快速が入ってきた。グリーン車以外は横シートだ。グリーン車に乗ろうか迷ったが、客はほとんどいなかったので、端の席に座った。

市川ではなく、その先の錦糸町で中野行きの最終に乗り換えた。その方が乗り換え時間にゆとりがあった。

中野行きはそれなりに混んでいた。水道橋を過ぎたあたりから眠くなってきた。時刻は12時を過ぎていた。

1時に中野到着。南口のタクシー乗り場には結構人が並んでいた。タクシー乗り場に並ぶのは久しぶりだった。10分くらい待ち、中野駅のシャッターが閉まった頃、タクシーに乗った。家の近くのコンビニまで乗った。1300円だった。コンビニでサンドイッチを二つ買った。

1時半帰宅。シャワーを浴び、荷物を整理し、夕食にサンドイッチを買った。久留米で食べて以来何も口にしていなかった。

3時半就寝。