4時まで『餃子酒場』で飲んだ。3時くらいに、どこかで飲んでいたリーマン二人組が入ってきて、大きな声で仕事関連の愚痴を喋りだし、テーブルで煙草を吸い始め、店員に注意されていた。ああ、久々に、クダが巻かれているのを見たなあと思い、店を出た。
神田駅のシャッターはまだあいていなかった。富士そばで朝飯にカレーカツ丼を食べた。カツカレー代わりのつもりだった。しかし、材料は一緒なのに、カツカレーとは違った。カレーカツ丼としか言いようがなかった。
食べ終わり、またうろうろすると、中国人女性客引きから七回くらい「マッサージいかがですか」と誘われた。一人だけ、大変粘り強い姉さんがいた。
「マッサージどうですか。始発まで寝られますよ。気持ちいいですよ。可愛い子いますよ。どうですかお兄さん。優しいですよ。美人な子いますよ」などなど、延々言いながら100メートルくらいついてきた。
始発で浜松町。モノレールで羽田空港へ。
6時25分の飛行機で福岡に飛んだ。
機内で『嫌われた監督』を読み終えた。
面白かった。週刊文春に連載されていた時に、何回分かは読んでいたが、まとめて読むと時系列のつながりに切れ目がないので、圧倒的にわかりやすい。
ノンフィクションなのに劇的で、鳥肌が立つ場面がたくさんあった。スタメンを外された立浪が、試合前に欠かさずランニングをしているのを、森野が知る場面が好きだ。立浪さん、かっこいいなあと思った。
福岡には8時25分に着く予定だったが、羽田で出発が少し遅れ、福岡で混雑のため着陸が遅れ、着いたのは8時40分だった。
天神から9時5分の高速バスに乗って長崎まで行く予定だったのだが、飛行機を降りて地下鉄に乗ったのが8時50分過ぎだった。空港から天神まで15分位かかり、そこからバス乗り場まで徒歩5分かかる。もう間に合わなかった。高速バスは予約していたので、無駄になってしまった。
博多で降り、特急かもめに乗ることにした。
自由席は空いていた。途中、佐賀駅に止まった。おお、県庁所在地滞在記録が増えた、と思った。
11時23分長崎着。高速バスの予定時刻より15分以上遅く、交通費は1000円ほど余計にかかった。
駅のコインロッカーに荷物を入れ、老舗中華料理店の『四海樓』を目指し、走った。駅から2キロ近くあったが、その程度の距離を走るなんて、手ぶらなら朝飯前だ。
ところが、四海樓に着くと、入り口に『満席』の札が下げられていた。時刻は11時40分だった。
すぐ、プランBを実行する。中華街の『江山楼』へ移動した。
11時50分、『江山楼』に着いた。幸い、並ばず席に案内された。「特上ちゃんぽんひとつ」と、躊躇なく注文した。
12時半までに大波止のフェリー乗り場へ行かなくてはならなかった。『江山楼』からは1キロほどあった。ちゃんぽんはいつ来るだろうと気にしながら時計を何度も見た。
12時を過ぎた時にちゃんぽんがきた。アワビの欠片が乗っているなど、高級具材を用いていることが、特上を名乗る根拠となっているようだった。しかし、スープが同じ味ならば、普通のちゃんぽん具材で十分だろうと思った。要するに、スープが完成しているので、具材は付け足しに感じたということだ。
美味かった。『江山楼』のちゃんぽんが『加勢大周』だとすると、オレが今まで食べてきた東京のちゃんぽんは、新加勢大周や坂本一生でさえなかったということがわかった。
食べ終わり、余韻を感じる暇もなく店を出た。12時半までには16分くらい時間があった。歩いて大波止のフェリーターミナルに向かった。12時25分到着。体温チェックをしてもらい、桟橋に移動する。
1時、フェリーに乗る。
行き先は端島。超有名な島だ。
別名、軍艦島。
港から40分ほどで軍艦島に着いた。絶海の孤島であるようなイメージを持っていたのだが、本土の陸地がよく見えた。
眼の前に、人類が滅んでから50年経った町のモデルがあった。風と波と塩によって少しずつ文明の表面が削り取られ、骨格がむき出しになった都市の遺骨があった。
そして、この景色を背景にして映像を撮りたいと思う人はどのくらいいるだろうと考えた。おそらく、許可されたとして、一番苦労するスタッフは衣装さんではないか。どうやって背後の崩落しそうな建物に負けない存在感の衣装を作るのか。
島には鳶がたくさんいた。もしかすると、建物が鳶にとって格好の巣になっているのかもしれない。
見学後、船で島の裏側に回った。そこは徒歩での見学ができないゾーンだった。少し離れたところから島を見ると、戦艦土佐にシルエットが似ているため、軍艦島と呼ばれるようになったらしい。確かに、軍艦のように見えた。
3時半に大波止港に帰港。長崎駅まで歩き、コインロッカーから荷物を出した。
4時17分のかもめ号に乗る。諫早で降りたが、一度も検札がこなかった。特急券を買わなくても乗れたなあと思った。
島原鉄道に乗り換える。一両編成の気動車。結構多くの人が乗っていた。ひと駅ごとに少しづつ降りていった。
多比良で降りた。5時45分だった。外はまだギリギリ明るかった。東京よりも西にあるため、時刻と太陽の位置関係でそうなるのだろう。
多比良港のフェリー乗り場へ。ちょうど船が入港するところだった。
乗船し、壁にあったコンセントでスマホの充電をした。軍艦島で写真や動画を撮りまくっていたら、電池の残りが10%を切っていたのだ。
船は熊本に渡る。
6時55分に長洲到着。すっかり日は暮れていた。
港からJRの長洲駅まで歩いた。1.7キロほどあった。グーグルマップを使って、おすすめしてくるルート通りに歩くと、真っ暗なところの細道を通った。去年から暗い道に縁がある。
7時15分頃に長洲駅に到着。これで今日は、乗り換えがタイトな区間はなくなった。少しホッとした。
八代行きの普通に乗り、8時9分に熊本到着。
駅前の市電に乗り、辛島町まで行く。歩いて行くつもりだったが、駅から2キロあった。もう歩くのは気分的に嫌だった。
降りて、スマホの地図片手にアーケード商店街を抜け、目当ての『松本ステーキ』へ。リブロースステーキの300グラムとライスを食べた。
店を出て、今日の宿まで歩いた。そこから900メートルほどだった。途中、コンビニでビールと酎ハイとハイボールに、つまみのイカフライとピーナッツを買った。
9時半頃にチェックインした。大浴場へ行き温泉につかった。
部屋に戻り、ビールを飲んだ。うとうとしてきて、ベッドに横になった。