「真実」観る

6時起き。鍋の残りに、先日スープだけ使って余っていた塩ラーメンの麺を入れて食べた。

明日、巨大台風が首都圏に上陸するとのことだったので、外に置いていた水耕栽培トマトを室内に入れた。さすがに今度食らったらひとたまりもないだろうと思ったからだ。
部屋に上げると、まだ結構多くの葉が茂っているように見えた。

朝はまだ雨が降っていなかったので、自転車を使って現場へ。

台風情報を調べる。明日の朝から夕方にかけて関東を直撃するようだった。今夜はギリギリセーフだった。

夕方6時半に神田の歯医者を予約していた。新宿駅に自転車で行けば間に合うのだが、予報によるとその時間はもう雨が降っていて自転車は使えそうになかった。

結局、30分早退することにした。自転車で来なきゃ良かった。

そして今日は映画「真実」公開初日。すでに夜9時50分の回のチケットをとってあった。終わりは11時50分。地下鉄なら動いているだろう。明日は無理だが、今夜なら観に行ける。

午前中、昨日の夕方に発生した虎舞竜を修正し、自分ツールの作業に戻った。こちらも、最後の機能である出力フォームの実装に取りかかる。

昼、コンビニ食。ナポリタンとあんまんを食べる。

『浮雲』読む。
お政は、お勢と本田を結びつけようと画策している気配。本田はお勢の手を握って離さないなどの戯れを仕掛ける。お勢は、今でもこういう子いるよなあと思わせる、要するに普通の女の子だ。

『浮雲』が書かれたのは1880年代と知って驚いた。日清戦争より前じゃん。

言文一致体の小説を日本語で書くための苦労は、1980年代後半における日本語ラップのそれと似通っているのではないか。あるいは70年代初期の日本語ロック論争とか。

主義ではなく、フィーリングの問題だ。今までの日本語の使い方だと「なんか違う」のだ。

その感覚を払拭するための試行錯誤が、言文一致、日本語ロック、日本語ラップ、どれも似ているんじゃないかなあと思った。

5時半に早退し新宿まで歩く。小雨が降っていた。

6時半から、神田のクリニックで前歯の治療。補修材を新しくしてもらった。麻酔で上唇の感覚がなくなった。

8時前に新宿へ。人通りが少なかった。

「安安」へ行き、夕食に焼肉を食べ、ビールを飲む。映画の上演時間まで2時間近くあったので、結構食べ、かつ、飲んだ。〆にユッケジャンクッパまで頼んだ。「安安」なのに3800円分飲み食いした。ここで一人2000円台以上食えると、心中「やったぜ」という気持ちになる。

9時半、TOHOシネマズ新宿へ。

「真実」上映のスクリーン8は、ガラガラだった。あとで数えたら、入場客は12人だった。

「真実」は、いつもの是枝作品と同じように撮られていた。たまたま俳優がフランス人で、ロケ地がパリであるというだけだった。

大女優ファビエンヌを演じるカトリーヌ・ドヌーヴが、普通の人間に見えた。新人女優と張り合い、芝居に自信がない時は神経質になるが、撮り終えてからも自分の芝居についてあれこれ考え、もう一度撮り直そうとする。大女優なのに不格好。でも、どこか許せてしまいそうな大らかさを持っている。

娘のリュミール役がジュリエット・ビノシュ。母が書いた自伝『真実』には嘘ばかり書いてあると怒るのだが、一番腹を立てているのは、亡くなった叔母・サラのことが書かれていないことだった。

サラもまた女優で、おそらくファビエンヌより演技の才能があった。しかしファビエンヌの方が役を手に入れることについてなりふり構わなかった。

リュミールは、サラの方が実の母より好ましい存在だった様子。

リュミールの夫をイーサン・ホークが演じており、「いつもの是枝作品」の感じをもっとも良く出していた。アメリカでドラマ俳優をしているという設定で、主役を演じられるようになるまで禁酒する誓いを立てているのに、ファビエンヌに『スーパー上から目線』で見下され、心が折れてワインを飲んでしまうところの芝居が良かった。

子役がかわいいのも、いつもの是枝作品と同じだった。イーサン・ホークは、どうやらナチュラル子煩悩らしく、本当の父娘みたいに接していた。

屋敷に住んでいる亀がかわいい。それを撫でる子供がかわいい。

自伝『真実』に、夫はどう書かれているかが明らかにされるところ、12人しか客はいなかったけど、笑いが起きた。あそこは笑った。

新人女優役の役者さんは、そんなに有名な人ではないらしいが、声の低さがたまらなかった。

11時50分に映画館を出る。外は雨だったが、降り方は普通だった。12時半帰宅。