予定と未予定

5時過ぎに起きた。腹が減っていた。

7時に朝食。讃岐うどんの椀があったくらいで、あとは普通。昨日の方が美味しかった。

8時過ぎにチェックアウト。今日はまったく予定がない。帰りは明日の昼までに松山と決まっている。

高知の「ひばり食堂」で昼飯にカツ丼を食べたかった。しかし8時過ぎに高松を出ると着くのが10時台になってしまう。早過ぎる。
そこで、途中で紫雲出山という、香川県から瀬戸内海に突き出している半島の山へ登ることにした。展望台があるらしい。

10時前に展望台へ着いた。近いとかえってわからなかった島の連なりが、パノラマ状に見えた。

展望台は桜の名所であり、春はものすごく混むらしい。平日だったので駐車場はガラガラだった。

山を降り、ひばり食堂に向かう。デカ盛りで有名な店で、行ってみたいと思っていた。
12時ちょっと過ぎに店に到着。3人ほど並んでいた。10分ほどで中に入れた。おっさんと相席になる。迷わずカツ丼を頼む。おっさんはミニカツ丼にしていた。
カツ丼はカツが二枚乗っていた。丼は大きかったが、底は深くなかったので、ご飯の量はそれほどでもなかった。大盛りにしたら話は別だろうが。

食べ終わると1時だった。松山に向かう途中で、仁淀川を観光していこうと思った。ちょうど途中にある。
仁淀川の見所はいくつかあるが、「にこ淵」「安居渓谷」の二箇所を見ていくと、ルート的にも無駄がなかった。

しかし、にこ淵が近くなるにつれて雲行きが怪しくなってきた。麓や平野部の暑さがそれらの雨雲の原因ではないかと思った。
車を降りると、雨粒が、きわめてまばらに降ってきた。にこ淵への降り場に向かう。かなり険しい段になっていた。

淵に降りると、目の前に仁淀ブルーのたまりがあり、向こうに滝があった。思わず「おお」と嘆声を漏らした。

淵のそばに降りようとしたが、淵をバックにくっつきあって自撮りをする仲良し女子三人組がいたので、背後に写るのを避けるため、撮り終わるのを待った。やがて、撮り終わった女子が上に登ってこようとしたので、代わりに降りようしたとたん、雨が本降りになり、同時に雷の音が派手に鳴った。
「おお!」今度は驚きの声が出た。そして少し足が滑った。「大丈夫ですか?」と女子が言った。雨はあっという間に土砂降りになった。そして雷。山奥で雷はヤバイ。残念だが車に戻るしかなかった。

車に戻り、タオルで頭と体を拭いた。雨音がすごい。夕立のようだ。やむかな? 待とうか? でも水量が心配だ。ふる前でさえ降りづらかったにこ淵を、雨の後に降りるのも危険だ。残念だが、ひと目だけでも見られたのをよしとして、安居渓谷に向かおうと思った。

にこ淵から麓に降りると道は乾いていた。雨は山の上の方だけに降っていたのだろう。道を西へ。

3時半に安居渓谷に着いた。車を降りて、川に降りるところを探していると、川沿いのお店の人が「ここからあと1キロくらい車で上るといいですよ」と言って地図をくれた。
その会話をしている時に、また雨が降ってきた。「濡れたっていいじゃないですか」と、お店の女性は言った。

雨に捕まる前に急いで川に降りねばと思い、1キロほど上流まで車を走らせたが、そこの駐車スペースに着いた時にはすでに雨はザーザー降りになっていた。そして雷の音。

何でもかんでも見るのではなく対象を絞れという啓示のようにも思えた。 さてどうする。松山に向かうか? しかし、せっかくここまで来て、雨に降られてすごすご帰るのはしゃくだ。5時まで待ってみよう。それでやまなかったら諦めよう。

シートを倒して、昼寝しながら雨がやむのを待った。しかし、雨音は小さくならなかった。結構な降り方だ。川の増水が気になった。
だが、最上流部の川は、雨が降る範囲が狭い。今、降っているその辺の雨だけが、流れになる。
麓は違う。ひとつの山ではなく、いくつもの山々で降った雨が収斂するから、あっという間に増水する。

実際、車から川の流れを見下ろすと、1時間経っても水量はそれほど変化していなかった。その間、雨はずっと降り続けていたというのに。
そして、いやらしいことに、雷の音も途切れなかった。

4時半を過ぎ、これはもうダメだと諦めた。それで、車を道のギリギリ端まで寄せて、崖下の流れを写真に撮った。

撮り終わり、来た道を降りていこうとすると、空が明るくなったような気がした。上を見ると、雲と雲の間に、青空がのぞいていた。そして、雨の降り方が弱くなってきた。これは、降りられるかもしれない。

再び、上のパーキングに車を移動し、タオルを頭から被って外に出た。降りは弱まったといってもやんだわけではなかった。しかし、河原にちょっと降りて戻ってくるくらいなら何とかなりそうだった。
向こう岸に渡る橋があった。渡ると段があり、川のそばに降りることができた。間近に寄って、仁淀ブルーを見る。が、当然のことだが、1時間以上も雨がザーザー降った後だったので、木の葉や木くずなどのゴミがたくさん浮かび、あまりきれいではなかった。

すると、しばらく鳴っていなかった雷の音が鳴った。「もういいだろ?」と警告するようなタイミングだった。再び雨か強くなり、すごすごと車に戻る。しかし、にこ淵も安居渓谷も、ほんの少しだけど清流の姿を拝めた。水に触れられなかったのは残念だが、ここは、満足しておくべきだろう。

渓谷を降りると、麓の道も雨が降った形跡があった。今度の雨は山間だけでなく、広い範囲で降ったとのだろう。
車を松山方面に走らせると、あるところから先の道は乾いていた。

7時前に松山へ。パーキングに車を止め、夕食を食べるために、スパゲティミートソースで有名な「でゅえっと」に向かおうとした。地図を確認するために検索したら、なんと、本日火曜は休みだった。

代わりに「アムール」という洋食屋へ行き、ビッグハンバーグを食べた。500グラムもあり、B5ノート並みの大きさだった。しかしライスの量は普通だったので、ぺろっと食えた。

デカ盛り系の注意すべきはライス量だと思う。昼に食べたカツ丼もご飯が1合前後に抑えられていたから普通に食えた。昔、上井草の「アストラーザ」というデカ盛りイタリアン洋食店でボークソテー450グラムに特盛りライスをつけて残しそうになったことがあるが、あの時もライスを普通にしていれば楽に美味しく食えたはずだ。

急遽たてた予定もここまでだった。あとは明日の昼前までなにもない。

宿もとっていない。

なぜ今夜の宿をとらなかったか、自分でも理由がわからない。忘れていたわけではない。ただ、とりたくなかった。昨年のように、桂浜で野宿するという目的があったわけでもない。

あえて理由づけをすると、そういう状況に自分を放り込んだら、どのように行動するのかを確かめたかった。だから事前になにも調べていない方が良かったし、何も考えてないほど良かった。

明日朝の時点で松山市内にいた方がいいから遠出はできなかった。どのみち、もう夜だった。時刻は9時前だった。泥まみれのスニーカーが気になったので、県庁そばのアーケード商店街でサンダルを探した。しかしABCマートはシャッターがしまっていた。

道後温泉に行ってみようと思った。車で2キロほどの距離だった。そういえば、スーパー銭湯に入って夜を明かすという手もあるな。いや、それも何だかつまらない。でも、温泉街は見てみたい。行ってみよう。

しかし、夕食を食べたあと、商店街を歩いたりしたために、どこのパーキングに車を止めたのかわからなくなってしまった。スマホで地図を調べ、止めた時のルートを思い出し、パーキングから「アムール」へ行く途中にあったコンビニへ向かい、そこから東西南北を探し、やっと見つけた。

道後温泉は絵に描いたような温泉街で、浴衣の湯治客が心地良さげに歩いていた。飲み屋もあり、祭の夜みたいな雰囲気だった。運転があるから飲むわけにはいかない。もし、今日はここで運転はおしまいというなら飲めるが、足がそこでなくなるのは心細かった。スマホの電池が切れかけて、カーナビしか情報源がなかったからだ。

そのまま車を止めて車中泊する手もあった。しかし、道後温泉のパーキングは外がキラキラしていて落ち着かなかった。海辺の無料駐車場みたいなところがあれば、星空など眺めてゆったりできるし、眠くなったら車中泊ができる。そうしよう。

しかし、そういう場所の心当たりはもちろんなかった。スマホを充電したくても、悪いことにコンビニのイートインは9時を過ぎると閉鎖されていた。明日の朝までスマホは使えない。

カーナビの地図画面を頼りにして、海辺のそれらしいところを検索した。港を目的地にして案内をスタートさせる。松山港のあたりだった。

しかし、行ってみると港の入り口は閉鎖されていた。そこで、海岸に沿って南に走ってみた。
空港が近づいてきた。どのみち明日の朝来るところだ。そのあたりで夜を過ごすのは馬鹿らしく思えた。道なりにあったセブンイレブンに車を止め、ガリガリ君を食べつつナビを検索した。
松山市は想像していた以上に市街地面積が広かった。名所も沢山あった。しかし、夜、ひっそりと時間を過ごせる場所は、ナビではわからなかった。

12時を過ぎた。土地勘のない者がうろうろするには遅すぎる時間だった。事故のリスクもある。やはり、そろそろどこかに車を止めるしかない。

結局、パーキングにとめるとしたら市の中心部に行くしかなかった。松山城の北西にある、大通り沿いのパーキングに止めた。もう朝まで動かさない。あとは自分の身をどうするかだ。

外に出た。ナビの地図を見たところ、近くに公園があるようだった。どんなものか見てみようと思った。ベンチなどがあればそこでしばらくボーッとしながら夜空などを眺めていられる。

通りに沿って歩き、角を曲がってまっすぐ歩いた。時刻はたぶん1時半だった。しばらく歩いても公園は見つからなかった。

パーキングまで戻った。こうやって位置確認をしていかないと、夕食を食べた時みたいにどこに止めたかわからなくなる。
反対方向に歩いてみた。ファミリーマートがあった。トイレを借りに中に入ると、イートインが開いていた。しめた。スマホの充電ができる。

車に戻り、スマホと充電器をとってきて、ファミリーマートに入ってコーヒーを買った。イートインに陣取り、コーヒーを飲み、スマホの充電をした。地図で、今いる場所の見当をつける。土曜日に止まったホテルの近くだった。

眠くなってきた。時刻は3時近くになっていた。車に戻ってシートを倒せばすぐに眠れそうだった。どうせすぐに日が昇る。そうしたら車を出してまたコンビニに戻って、朝飯を食べながらスマホの充電をすればいい。

パーキングに戻り、シートを倒した。靴を脱いで目をつぶると、すぐに眠気がやってきた。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。